五話 であってしても
―――肩に足を乗せて剣を引き抜いた。
すると三人の剣聖が一斉に襲いかかってくるが、緋月はそれを避けて、避けた勢いを利用して剣聖の顔に踵をお見舞いした。
剣聖の身体は吹き飛び地面を跳ねながら転がっていった。
他の二人が連携技を繰り出してくるが、緋月はそれを大剣で受け止め弾き返した。そして目にも止まらぬ速さで大剣を振るった、するとたちまち剣聖の胴は真っ二つに切れてしまった。
「……さ、あと一体」
先程の苦戦は何処へやら。緋月の顔は余裕そうでも、疲れきった顔でもなんでもなかった。ただただ、無だった。
剣聖のクローンは立ち上がり剣を構えたが、その剣は小刻みに震えていた。クローンに感情などあるはずがないのにだ。
「直ぐに終わるから、そんなに怖がんないでよ」
緋月が安堵させるように言うがクローンはそれを信用しない。緋月が目の前に立つと、無表情な顔とは全く異なり、クローンはピクッと肩を大いに跳ねさせた。
「君たちの役目はもう終わり。……休んで」
緋月は動けないでいるクローンにそう優しく言ってあげると容赦なく大剣で袈裟に切るのだった。
最後のクローンが倒れたのを確認して緋月が一息吐いた時だった。
「っ、アイシュリングッ‼︎」
本来の目的である悪魔召喚をしていたアイシュリングのことを思い出したのだった―――。
―――ガキィンという甲高い音が響きその高音に耳鳴りが起きる。
がそんなことでは戦いは止まらない。律が盾を構える五十鈴の後ろから飛び出して、『ジュウ』と言うものを構える謎の武装をした人物に斬り掛かった。
スカッと空振りで終わってしまうが、律は攻撃の手を緩めなかった。
グイッと手首を回して空振った刀の刃先を天へ向けた。そして天に昇る龍が如く―――否、燕のように素早く身を反転させるが如く、律は刀の刃先を天へ反転させたのだ。
だがその不意打ちとも言える攻撃すら空振ってしまった。
「律様……当てて下さい」
「う、うぅ……すみません〜……‼︎」
当たらない律の攻撃に五十鈴が呆れたような顔でボソッと口にした。それは律に聞こえており、涙をちょちょ切れさせながら刀を構え直した。
(でも、本当に当たりません……、一体どうして……)
そう、当てれないのではなく、当たらないのだ。それは同じようで全く違う。
「……ただの私の鍛錬不足、ですかねッ!」
予備動作無しの律の素早い攻撃は、またもや空を切った。
ほぼ不可避の攻撃だった。だが交わされるまでもなく、攻撃は当たらなかった。
「えぇ〜⁉︎」
こう何度も当たらないとなると、流石の五十鈴も違和感を覚えた。支援ばかりだったが、敵との間合いを詰め、律と連携をし戦闘を始める。
だが二人の入り乱れの攻撃は全てが当たらなかった。
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