十九話 地獄の始まり?
「―――ッ」
「おぉ! 泣き叫ばないってのは初めてだな! どんな精神してんだオメー⁉︎」
太腿にナイフを深く刺されて悲鳴をあげない人間など存在しないだろう。薬や感覚が麻痺っていない限り。
この痛みくらいなら耐えられると、そんな葛葉の甘い考えはすぐに男によって潰された。
「―――ッ‼︎」
深く刺されたナイフでグリグリと、男は葛葉の太腿の肉をズタズタに引き裂いた。
痛みに悲鳴がでかかったが葛葉は耐えて見せた。
「スゲーなお前……。若干引いてるぜ? 俺」
死にたくなるような激痛のはずが、見事に耐えて見せる葛葉に男は冷や汗を掻いて、不気味な物を見るような目を向けた。
「……なら、根を上げるまで徹底的に痛めつけるか。おい、あれ持ってこい」
「へい!」
男がそう指示を出すと、横にいた別の男が返事を返してから急いで部屋を出ていった。
男は「よいしょっと」と葛葉と目線を合わすためにしゃがみ込んで、葛葉の目を見やった。
「おぉ、怖い怖い。そう睨むなよ……チビっちまうだろ?」
「……っ、リーニヤをっ、解放っ、しろ!」
ガチャンッ‼︎ と葛葉の手首足首に付けられた枷が音を立てた。
太腿の痛みを忘れる程の怒りを葛葉は男にぶつけようとしたのだ。
「おいおい、あんま無茶すんなよな? んで、解放? そりゃ難しい話だなぁ、情報を吐けっつっても、喋んねぇじゃんお前ら」
枷を壊そうとガチャガチャと何度も、枷の繋がれている柱に枷を打ちつけた。
「それで解放しろってのは無理な話だぜ〜?」
葛葉の吐いた言葉を思い出した男が笑いながらそう口にするのを、葛葉はただ睨むことしか出来なかった。
そんな時だった、
「持ってきました!」
「おっ、サンキュー。……じゃあ、始めっか」
大量の拷問器具かなんかの道具を持った男が帰ってきて、しゃがみ込んでいた男が器具を一つ手に取るのだった―――。
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