十五話
音の発生源に到着すると二人は言葉を失った。何重にも重なって作られた頑丈な壁が、見事に綺麗にぶち抜かれていたからだ。
「っ、居た!」
瓦礫の山、その中で緋月は壁を打ち抜きながら歩いていく人影を捉えた。それはまごう事なき鬼丸だった。
「鬼丸!」
「……うぬか。手を貸せ、わしは葛葉を……」
「いいや、その前に作戦会議だ!」
気を抜かすことが絶対に許されないような空気に息を呑んだ。
「葛っちゃんを信じるんだよ! ボク達のするべきことはあの子の分まで頑張ることだ! 一人で暴れ回ることじゃない!」
死を自覚しながらも緋月は鬼丸にそう叫んだ。
すると鬼丸はゆっくりと緋月に手を伸ばした。そして、ペシっと緋月の頬を平手打ちしたのだった。
「うっ……つ……」
「信じるだけで人が救えるか‼︎ ……うつけ者めが。はぁ、うぬは大馬鹿者じゃ! ……じゃが、うぬの言葉も一理ある。
「てーことは?」
「話すが良い、作戦とやらを」
と鬼丸は大変は不服そうに緋月へ言った。緋月は鬼丸の説得に顔を明るくさせた。
そして緋月は律に目配せし、律はすぐさま緋月のその意図を察して走り去った。
「じゃあ、鬼丸には先に話しとくね」
作戦といっても、アイシュリングをただ止めるだけの戦い。剣聖のクローンがただ鬱陶しいだけの戦いだ。
故に、緋月側の最高戦力は自分を含め、鬼丸やクロエ、クロエの専属護衛。どうにか戦える戦力なのだ。
「鬼丸には〜……もう正面から行ってもらって、ボクが不意打ちな感じで加勢するよ」
「加勢? はっ、わし一人で十分じゃろうが」
「わ〜、すっごい自信〜」
剣聖相手に啖呵を切る鬼丸に必要は多少なりとも驚いていた。自信過剰レベル100で草と、思っていたその時だった。
「で、剣聖とはなんじゃ? 新種の巫女なのじゃ?」
「……新種の巫女って、動物じゃないけど。えと、剣聖ってのはね、鬼丸が封印された後にで出来た人物だよぉ」
「なんじゃ、わしの居ない時代に生まれただけの凡夫か」
「ははは……」
フラグにならないよねこれ、と言いたげな顔で緋月は苦笑を浮かべるのだった。
読んで頂きありがとうございます!!
面白いと思って頂けましたら、ブックマークと評価をお願いします!!




