十四話 話さないとやで
「―――ギルド長さん‼︎」
ポタッ、ボタボタと一滴二滴と雫だった血が水のように地面へこぼれ落ちた。
「……ぅう、しくった〜」
腹部を貫通している剣を見て緋月は剣身を掴み目一杯の力で剣を引き抜こうとした。
手からも血が溢れ地面が鮮血で染まってゆく。そんな時だった、剣聖へ向かって飛び掛かった影。それは勿論、
「―――っ! はぁっ‼︎」
律だった。緋月に剣を刺している剣聖のクローンに斬り掛かった。
剣聖は剣から手を離し身を翻して律の攻撃を避けた。
「ギルド長さん! こっちです!」
その隙に律は緋月に肩を貸して一度撤退することにしたのだ。なにせ緋月の出血が酷く、一刻も早く止血しなくてはならないからだ。
「い、いや、りっちゃん! アイツを止めないと‼︎」
律に運ばれていく緋月は悪魔召喚を続けるアイシュリングに手を伸ばして悔しそう口にした。が律はその言葉を無視し足を止めなかった。
そうしないと緋月が死んでしまうから。
「……ありゃ、ボク、説明してなかったっけ?」
ふと、緋月は自分のことを葛葉以外の葛葉パーティーメンバーに話してなかったか疑問に思った。
「ま、いっか。……どのみちジリ貧だったしなぁ〜」
どんなに緋月が強かったとしても質の高い量には勝てないのは当然だろう。
「それよりも」
葛葉の方が心配だった。
「りっちゃん! 葛っちゃんはどうしたの⁉︎」
「っ、分かりません! ただ庭に結界が張られたんです、葛葉さんと他一般メイドが二人、洗濯のためにその場にいました……‼︎」
葛葉を思う気持ちは律だって負けていない。不安ではち切れそうなのは緋月だけではないのだ。
不安げな律の横顔をみて緋月はまたキッと本気モード、もといやる気スイッチをオンにした。
「りっちゃん。クロエとか戦闘ができるメイドを集めて。一般メイドは避難ね」
「……? ギルド長さん?」
「悪魔召喚は詠唱を唱え終えたとしても、召喚が完了するのは一時間半は掛かる。時間的には十分。だから作戦会議だ!」
と本気モードが故のギャップを最大限に活かしたキメ顔を披露する。カッコいいが溢れているだろうな、そんな自画自賛的な考えが脳裏に過ぎったその時。
ドンッ‼︎ という爆砕音が聞こえてきたのだ。
そんな緋月のかっこいいを邪魔するその音に、
「もぉ〜‼︎ ボクの貴重なかっこいいシーンなんだよ⁉︎ それを邪魔するって、一体どこのバカなのさッ⁉︎」
自分でも貴重と思っているかっこいいシーンを邪魔した爆砕音。音を立てた自分物に聞こえるはずない文句を垂れるが、二人は大体合点がいっていた。
葛葉が不味い状況になって、超不安になるのは律、緋月、五十鈴、そして鬼丸。
「……不味い状況、かも?」
葛葉を誘拐なり何なりされた時、鬼丸を宥めれるのは葛葉ぐらいだ。つまり、止めれる者はいないのだ。
二人はある速度を上げて音の方へ向かうのだった。
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