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九話 曇天な雲行き

 ―――港町オーシャン近郊。

 パチパチと焚き火からそんな音が聞こえ、抜けたゆらゆらと揺れる火を眺めながら木を焚べる。


「はぁーっ‼︎ あとは帰るだけだ〜‼︎」

「先輩、はしたないですよー?」


 頼まれていたお使いが終わり、メイド服姿のボーイッシュ女性が伸びをしながら大きな声で言った。すると反対側、焚き火の向こうに座っている人物―――同じメイドが注意をして来た。


「だって〜、こっから向こうまであと三日だよ〜? ま〜た馬車で長時間座るかもしれないんだしさ、ここで寛ぎまくろうって!」


 とそれらしい理由づけをしたボーイッシュメイドがそう言ってくるが、ロングヘアメイドがはしたないと言ったのは違う意味でだった。


「普通にパンツ見えてますよ」

「え、あ、わわわ!」


 脚も大きく伸ばした所為かメイド服が捲れるパンツが顕になってしまったのだ。幸いなことに周辺に二人を除いて人は居なかった、いや居なくて当然なのだ。

 湊町オーシャンからはそうとう離れており、人っこ一人いないのだった。


「気抜け過ぎですよ、戻った時にその調子じゃ怒られますよ?」

「大丈夫だと思うって〜、クロエ様だよ?」


 ―――そう。ボーイッシュメイドとロングヘアメイドは、アダルバート家の使用人なのだった。


「先輩……」


 ボーイッシュメイドを蔑んだ目で見るロングヘアメイド。ロングヘアメイドの名は、莉乃(リノ)

 そして先ほどから騒がしいボーイッシュメイドの方が、エミリエという。

 二人はアイシュリングから直々にお使いを頼まれ、わざわざこんな遠い街までやって来たのだ。本来なら往復で一カ月は掛かる距離だが、そこは貴族の特権、お金という暴力で転移魔法を使うのだ。


「リノには先輩を思う気持ちがないと思うね」

「そういうのはちゃんと先輩としてかっこいいところを見せてからにしてくださいよ……」


 エミリエの下で今までやって来たが、いまだに先輩らしさを全く感じられていないリノ。

 そんなリノの目に涙が禁じ得ないエミリアが、トホホと肩を落としたそんな時だった。


「?」


 足元に転がってくる何か。

 リノは本能が警告を発し、即座に手を何かに翳してギュッと目を瞑った。次の瞬間だった。

 目の前が真っ白に染まる感覚。それは手や腕、瞼越しでも感じ取れた。


「っ……? ―――っ!!」


 何が起きたのかキーンと耳鳴りのする耳を澄まし辺りの足音をよく聞くのだった。前方に苦しむエミリエの声、そして遠くからやってくる複数人の足音。

 と何やら聞き慣れない音が遠くから複数人来ていた。


「―――おいおい、一人だけちゃんとスタンできてねぇじゃねぇかよ!」


 男の粗雑な声が聞こえると同時、ドサッと誰かが倒れる音が聞こえた。

 チカチカしていた視界が治り始め、周りをよく見ると、変な格好をした男がエミリエの身体を踏み付けて立っていた。

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