七話 考えたから
すみません!!
遅れてしまいました!
「―――こんな所に居たんだね」
「緋月さん……」
夜天を眺めていた葛葉の下にやってきた緋月が声を掛けてきた。
「みんな心配してたよ」
「……怒られちゃいますかね?」
みんな心配、の言葉にピクッと反応した葛葉は恐る恐る緋月に尋ねると、緋月は微笑みながら答えた。
「うんや。クロエが今日は休ませるって言ってたから、多分怒られないし、内容が内容だろう?」
どうやら葛葉とクロエの会話内容に察しているのか、緋月は見透かしたように言ってきたのだ。
「君なら、考え込むだろうって思ったよ」
「凄いですね、緋月さん。……私のことをよく理解してますね」
なんでもお見通しな緋月に葛葉がそう言うと、よほど嬉しかったのか破顔すると、すぐにドヤッと表情を変えた。
そして真っ平らな胸を突き出し相変わらずドヤ顔のまんま、自慢げに語り始めた。
「ふふんっ。当然さ! ボクは葛っちゃんの全てを理解しているとも! そうっ、葛っちゃんの今日のパンツが白色ってことも!」
前半は特に問題なかったのに、後半で一気に台無しになった緋月に葛葉は顔を向けた。
最後がいつも余計なんだよなぁ〜、と思いながら緋月から目線を外すのだった。
「……それで? あの子の話を聞いて、こんだけ考える時間があったんだ。答えは出たのかな?」
すると雰囲気をがらりと一変させた緋月が葛葉に問い掛けてきた。
緋月の珍しい師匠タイムだ。
「……何も、出ませんでした」
「ん、そう。んまぁ、【英雄】だろうと誰だろうと、クロエの話は個人の問題だからね」
葛葉の声のトーンから落ち込んでいるとそう思ったのか緋月はフォローを入れるが、葛葉は、
「緋月さん。【星を眺める者】を救いたいです」
「……」
緋月に葛葉の真意は通じはしない。そこまで理解してたらそれはただのエスパーだからだ。
だから葛葉の上っ面だけの言葉だけを緋月は受け取った。
魔王討伐に次ぐ、人類延いては世界に課された目標である邪竜討伐。七匹の邪竜の中でも群を抜いて強力な個体【星を眺める者】。
前英雄を殺した世界の敵。
「を倒したい……か。今の君じゃ、いや、今の二倍、三倍強くなったところで君には無理だよ」
「それでもです。クロエ様……さんの、悲劇の元は邪竜の所為です。だから、次の悲劇の犠牲者を出さないために、倒したいんです‼︎」
緋月の顔は暗い。誰よりも【星を眺める者】の強さを知っている緋月だからこそ、葛葉を止めるのだ。
「……邪竜は人の業そのもの」
「?」
「倒すにしてもまだ早いよ。今の君じゃ瞬殺されるし、封印はまだまだ保つはずだ。だから今君に出来ることはないよ。……そ、だからね! 他のことをするんだよっ!」
諭すように葛葉にそう言うと緋月は顔を上げて、いつも通りの笑顔で葛葉にくっ着き始めた。
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