一話 会いたかってん!!
葛葉達がクエストに旅立ってから早一週間、オリアギルド支部のギルド長室はとても穏やかな時を過ごしていた。
葉加瀬が職員の入れてくれたコーヒーを啜りながらノーパソと睨めっこしていると、不意にコンコンとギルド長室の扉がノックされた。
ノーパソを閉じコーヒーカップを机の上に置いて、葉加瀬はどうぞと扉に向かって合図を送った。
「邪魔します」
と関西訛りの声が聞こえてくると白髪ロングの美少女が中に入ってきた。
「……今までどこに? 一」
しばらくの間見てなかった一を案じていた葉加瀬は、多少驚き、それを顔には出さずただ淡々と何をしていたのかと尋ねるのだった。
一は愛銃であるM134を部屋の端っこに置いてから葉加瀬の前まで来て一息吐いた。
「武者修行やで〜」
「だとすると、随分と早いお帰りだね」
「あはは、冗談冗談。つっても、半分やけどなあ」
一の心の奥底の黒い感情。それを見透かしている葉加瀬は一の上っ面だけのその言葉や表情をジーッとただ見続けていた。
「アイツ、ダサいんよ。ほんま意気地無しやったで……。でもそんな奴も、最後の最後はカッコよく死んだ」
誰かのために命を張れる自己犠牲精神、それはとても勇敢で格好の良い行為で、たくさんの悲しみを生む愚かな行為でもある。
だが、アイツ―――アサヒは歴史に残るだろうことをした。それはまだ未熟な【英雄】を自己犠牲の元、迫り来る魔獣の群勢から救ったのだから。
後々のことを考えれば、とんでもない功績なのだから。
「ウチもカッコよく死にたい、そう思ったんや」
「そのための武者修行……か。まだまだ続けるんだろう? 武者修行」
「当たり前やん? せやから、最後に葛葉ちゃんに会いたかってんけど、どこにも居らへんのよ」
やからクタクタ〜と呟き足をバタつかせ、接待用ソファーに座っている一の斜め後ろに控えていた職員に顔だけ向け「冷たいお茶ちょ〜うだい」と言う。
葉加瀬が手で合図をすると、職員は一礼してからお茶を用意しに向かった。
「葛葉ちゃんならね、クエストに行っているよ」
「へぇ〜ぇ、いつ帰ってくるん?」
「後三週間ほどかな」
「なっが」
葉加瀬が顎に手を当ててそう答えると一は固まってしまった。え〜っ、と言いたそうな顔な一は頭の後ろで手を組み、ん〜と数瞬の考えの後。
「じゃあ延期やな!」
「薄っぺらい覚悟だったね」
簡単に延期となった武者修行に葉加瀬は冷たく言った。
「そんなん知らへん知らへん」と言いながら手を振る一の顔には、先ほどの表情は消え失せ、なぁなぁな表情で冷たいお茶を待つのだった。
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