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九話 緋月の万能薬

「あと三十秒ですわね、シオン。これが終わったらヒバナを部屋に運んでおいて、治癒師を向かわせますわ」

「了解しました」


 クロエがふと顔を上げ戦いを繰り広げているヒバナを見て、シオンに指示を飛ばした。

 そんなクロエに葛葉は顔を傾げて、激化している戦いを見た。


「クロエ様、後三十秒って……?」


 何が三十秒なのか、葛葉はクロエへ自然と尋ねていた。


「ヒバナの魔法の効果時間の残りですわ」

「効果時間……」


 まだあの魔法を使ってから一分しか立っておらず、何となくだが葛葉は、あの魔法の威力の高さに合点がいった。


「短期決戦用の魔法」

「ええ、そうですわ。ヒバナの魔法は命の危機に瀕した時、使用可能となりますわ。最期の力を振り絞る、そんな魔法ですわ」


 葛葉の呟きクロエは丁寧に説明してくれた。


「効果時間は一分半、使い終わった時、全身から力が抜けてしまいますわ。全身の筋肉が引き千切れて」

「っ、全身の筋肉が引き千切れる……って」

「苦痛ですわ、まぁ大体その激痛によって気を失うので、その間に部屋へ連れて行きますわ。あの結界の中なら筋肉も再生しますわ」


 衝撃の魔法の代償に葛葉は驚き言葉を失った。肉離れですら中々の激痛なのに、それが全身で起きると考えれば、あの魔法をもう一度使おうとは思えない。誰もがそうだろう。


「葛葉の特訓はまた明日ですわね」

「……本音言っちゃうとしたくないです」

「するんですのよ〜!」


 葛葉の正直な言葉に微笑むもクロエは主張を変えなかった。

 特訓するくらいなら、メイドとしての仕事をしていた方がきっと楽だ。葛葉はそう思いながらも渋々受け入れるのだった―――。




 ―――手に持っていた箒を床に落として、緋月は地団駄を踏みながら、


「葛っちゃん成分が足りなくなってきたぁ〜‼︎」


 と喚き散らすのだった。

 その隣で窓を拭いていた律が苦笑を浮かべて、緋月のことを宥めようと声を掛けるが、緋月には通じず、相変わらず緋月は地団駄を踏む。


「てか、鬼丸は⁉︎」


 ここには居ないロリっ子に緋月は少しの憤慨を込めた声で叫んだ。


「鬼丸さんは……」

「今頃好き勝手してますよ」


 二人のその言葉に緋月は納得のいかない顔で箒を拾った。

 今緋月たちは廊下の掃除をしていた。


「はぁ、ボクもなんか……天変地異みたいな存在になれば好きなようにさせてもらえるかな〜?」

「お、鬼丸さんは特別ですから……」


 緋月のそんなぼやきに律が珍しくツッコんでくる。

 天変地異の中でも緋月はトップレベルの力を持っている故、緋月がいくら天変地異を目指しても、鬼丸のような扱いはされないのだ。

 緋月は深く長いため息を吐いて、床を箒で掃くのだった。

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