六話 超再生は万能じゃありません?
そして次にはブスッとなにかが腹部に刺さる感覚を覚えた。それは背中から腹部まで貫通し、どろっと血を垂れ流すナイフの切先。
「……て、手加……減……」
バタンとアキが倒れ闘技場の地面にじんわりと血が広がっていった。
「勝負ありましたわね。……次はヒバナとアヤカよ、準備していなさい」
「はい!」
「り〜」
一瞬で着いた決着に葛葉はマジかと驚いていた。正確に言うなればシオンに驚いていた。
このクロエヴァを守るメイド達は皆冒険者ではない、だがシオンは葛葉よりも潜在能力がある気がしてならないのだ。
「見えなかった……」
ボソッと誰にも聞こえないような声量で葛葉は口にするのだった。
それからしばらくして、闘技場にはヒバナとアヤカが相対していた。それを葛葉は観戦している状態だ。
そしてそんな葛葉の隣で、先ほど腹部を刺されぶっ倒れたアキが、刺された箇所を押さえながらぐったりしていた。
「……クロエヴァ様、この結界ってどういう効果があるんですか?」
様付けがもう身に染みてしまった葛葉は、特殊結界と言われていた目の前の結界を指差し、クロエヴァへ尋ねた。
「葛葉、私の名前を呼ぶ時は今後、クロエでいいですわ。私、愛称で呼ばれる方が好きでしてよ!」
「え、は、はい? く、クロエ様?」
クロエに言われた通り葛葉は愛称に様をつけて呼んだ。するとクロエはムフーとニンマリ笑顔でドヤった。
「そうでしてよ! ……それで、結界についてですわね? ふふ、簡単ですわ」
ドヤ顔から普通の顔に戻るとクロエは解説し始めた。
スタスタとアキの隣まで行き、アキを立たせた。そして、
「怪我があるように見えます?」
「……いいえ」
ガバッとアキのメイド服を剥ぎ、アキの刺された箇所を指差した。
アキに服を返しクロエは闘技場の中の血溜まりを指差し、
「ええ、この結界は負った傷を瞬時に再生する結界ですのよ。ただ……流れた血は身体に戻ってこないですわ」
と今度は顔色の悪いアキを指差した。
「貧血です……」
「今日はゆっくり休んで良いですわよ」
「あ、ありがとうございます……」
先程までのはつらつな様は何処へやら、青白い顔と枯れてしまいそうな声でアキはクロエと話す。
クロエが優しくそう言うとアキは、近くの椅子に腰掛けた。
「……それでは、次の特訓を始めますわよ! では、始め‼︎」
ずっと待機していたヒバナとアヤカにクロエは大きな声で、特訓開始の合図を送るのだった―――。
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