三話 可愛いメイドさんにお世話されたい……
通された部屋の中には複数人の女給士が居た。一人は見覚えがあったが、もう二人は今初めて出会った。
「紹介しますわ! 私のことを守るメイド達ですわ‼︎」
クロエヴァがそう紹介すると見覚えのあるメイド―――犬耳メイドのアキがいの一番に一礼し、
「改めて。クロエ様の専属メイドをやらせて頂いている、アキと申します!」
惚れ惚れする作法でそうアキは葛葉に向かって改めて自己紹介するのだった。
「それでこっちが」
クロエヴァがアキの紹介を終わるのを待って、次に初対面のメイドの順番になった。
黒髪ストレートの長髪で、きっちりと揃えられた前髪に整った顔、葛葉とは違うクラシカルのメイド服で、全体的に大人びていて美しい。
「お初にお目にかかります。クロエ様の専属メイドをしている干葉奈と申します」
アキどうように完璧な作法で自己紹介をしたヒバナに、葛葉は首を傾げていた。
そして疑問を解消するべくヒバナへ尋ねることにした。その内容は、
「干葉奈さんって日本人ですか?」
「そうですよ、【英雄】鬼代葛葉さん。私達以外の日本人は初めて会うんだけど、まさかその最初が【英雄】なんてね」
ヒバナの口調が変わり砕けた雰囲気になる。葛葉はまたしても疑問を抱いた。ヒバナが言った、私達以外の日本人という言葉に。
「私達以外ってことは……」
「えぇ、もう一人いるの。……ほらっ、いつまでもゲームしてないで、自己紹介しなよ!」
とヒバナが部屋の隅で懐かしきゲーム機で遊んでいたもう一人のメイドの襟首を掴み、葛葉の真ん前まで引っ張ってきたのだ。
「うへ〜、私はいいよ〜。あんま人と関わりたくないの〜」
嫌々と駄々を捏ねるそのメイドに葛葉が唖然としていると、そのメイドと目が合ってしまった。
「……クロエ様の専属メイドをしている絢香で〜す。どうぞよろしくね〜」
ぎこちない作法と、今までの二人とはかけ離れた適当なその作法などに、葛葉は、この人が本当に大貴族の専属メイドなのか? と疑ってしまった。
そんな葛葉にクロエヴァが声を掛けた。
「さぁ次はあなたの番でしてよ」
「え、あ、はい! わ、私の名前は鬼代葛葉です。ご存知の通り【英雄】をやってて……ここには依頼を受けてきました。短い間ですがよろしくお願いします!」
葛葉は精一杯の自己紹介をして深くお辞儀した。
幾つになっても自己紹介は恥ずかしく、頭を下げている葛葉は、耳まで赤くなってないかなと心配していた。
「よろしくです!」
「よろしく〜」
「よろしく、英雄さん」
その声を聞いて葛葉は頭をゆっくりと上げるのだった。
ただ一人、葛葉には目もくれず、窓の外の朝日を眺めている猫耳メイド、シオンをクロエヴァは真っ直ぐと見るのだった。
そんなクロエヴァの横では微笑ましい光景が広がっていた。
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