二話 贅沢な名だね
「―――ここで働かせて下さい!」
「いや、あのさ」
アイシュリングの部屋にて、メイド服に身を包みアイシュリングの前で綺麗な姿勢で訴えるのは、露出の多い服を人に来させてくる人物だった。
「ここで働きたいんです!」
「誰かこの人を引き取って……」
働くも何も、依頼を受けたのだから働くもクソもないので、このおふざけに付き合わされているアイシュリングからしたら意味不明この上ないのだ。
「いい加減黙るのじゃ。話が進まん」
「ちぇ〜」
緋月の茶番を、緋月の頭を結構な威力で叩き辞めさせた鬼丸が、ため息を吐いた。
大量のフリフリが付いたゴスロリメイド服なのだが、鬼丸が腕を組んでムスッとするため、可愛らしい服とは似つかなかった。
「……で、あと二人だったよね?」
「あぁ〜……もうそろそじゃな」
この場には居ない律と五十鈴、二人が揃ってから正式にメイドとしての仕事が言い渡されるのだ。
「―――失礼いたします」
コンコンと扉がノックし中に入って来たのは、スチームパンクなメイド服に身を包んだ五十鈴と着物のメイド服に身を包んだ律だった。
「……バラバラじゃな」
「いや〜映えるねー」
見事にゴスロリメイド服、ミニスカメイド服、スチームパンクメイド服、着物メイド服と全く系統が違い、バラバラな服達に鬼丸達、服を着ている側が困惑していた。
「こんなバラバラで良いのか?」
「あぁ問題ないよ。うちは色々なバリエーションのメイド達がいるからね。全員が全員、おんなじじゃ飽きちゃうからね」
と鬼丸の問い掛けに自信満々な答えたアイシュリングに、鬼丸は「はぇ〜」っと呆けた。
「ね〜、変態でしょ〜この人〜」
「貴様のが変態じゃろうが」
ミニスカなのに関わらず大胆に座る緋月と対面して、誰もが認めているであろう事実を口にするのだった。
「じゃ、早速メイドとしての作法を身につけてもらおうかな」
啀み合う鬼丸と緋月を無視し、アイシュリングは手を叩いて話を進めることにした。
メイドの作法、それは鬼丸と緋月には程遠いものだ。
「とりあえず八重樫くんはその座り方やめよっか、それとテーブルに座るのもね」
アイシュリングが緋月にそう注意し、緋月がその注意を受けテーブルから降りると、ぷーくすくすと笑う鬼丸と緋月が取っ組み合いの喧嘩を始める。
目が合えば喧嘩、その場にいるだけで喧嘩、遠くにいても口喧嘩。そんな調子の二人にアイシュリングはとても深い深いため息を吐いて、律と五十鈴に尋ねた。
「あの二人っていつもこうなの?」
「……いやぁ、そんなことは」
「ここ最近ですね」
口を濁す律とは違って五十鈴はザッパリと言った。
それを聞いたアイシュリングは、なんでこのタイミングなのさ、と目頭を抑えるのだった。
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