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一話 いろんなメイド服

 用意された服を着終わり、姿見の前で前後ろに着崩れがないか確認する葛葉。クルクルと回り、ヒラヒラ舞うメイド服。

 扉の前でその様子を眺めていたクロエヴァと猫耳メイド―――シオン。クロエヴァはボソッと声を漏らした。


「理不尽な可愛さですわ……」


 仮にも絶級の美少女な葛葉にメイド服は、鬼に金棒みたいな物だ。

 多少なりとも葛葉の美貌に見惚れているクロエヴァとは違って、隣にいるシオンは顔色一つ変えず、ただジーッと葛葉のことを見ていた。


「あの……露出多くないですか?」

「だそうですわよ? シオン?」

「……慣れです」


 そういうと同時に、シオンとクロエヴァは着衣室から出て行ってしまう。急いで葛葉も後を追いかけた。

 用意された服は緋月がこの屋敷に送った物らしく、露出が多いのも緋月(ヤツ)の趣味かと思った葛葉だが、この屋敷では露出の多いメイド服が普通らしい。

 実際、昨日見かけていたメイド達は露出が多かった。目の前のシオン然り。


「我々メイドはクロエ様、そしてアイシュリング様の役に立つのと、アイシュリング様の目の保養となるべきですから」

「……てことはこれって」


 そのシオンの言葉に葛葉はピタッと足を止めて然るべき考えを口にしようとした時だった。


「不敬ですよ、鬼代葛葉」


 名を呼ぶと同時に葛葉の首元にナイフの切先が押し当てられ、腹部にもナイフが向けられていた。

 後一歩、刺そうとして来ているシオンの両手を押さえるのが遅れていたら、葛葉は死んでいた。


「言葉にはお気を付け下さい。……特に私の前では」


 殺気だったシオンの目で見つめられ、葛葉はコクコクと頷くのだった。


「そのデザインはお父様が選んだわけではないんですのよ。それは私の母様が選んだ物ですわ……」


 葛葉はクロエヴァのその話を聞いて、重苦しい雰囲気の中頭の片隅で、勝手にクロエヴァの母親の人物像を思い浮かべた。

 真っ先に思いついたのは、


(……緋月さんみたいな人なのかな〜)


 と葛葉の身近に居るいい例の人の顔がチラついた。

読んで頂きありがとうございます!!

ちなみに葛葉のメイド服はフレンチメイド服です!

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