十七話 寝させてくれねーなぁおい
「は」と葛葉の口からただ一言、そう溢れた。
唐突に唐突が重ねられ、唐突をトッピングされてしまい、葛葉は何がなんだか状況を把握するのに時間が掛かってしまった。
「えと、それって」
「えぇ、そうですわよ。日中は私の身近なところで護衛が出来る上、メイドとしての仕事も出来ますの。これぞまさに一石二鳥ですわ!」
ベリグッしてくるクロエヴァがニッと笑みを浮かべ 葛葉を見てくる。
「……それはそれで良いんですけど。ラペリングで入ってくる必要ありましたか?」
廊下などの立ち話で済ませそうな会話内容に葛葉はかつて窓ガラスだった物を再度見た。
「では私は用事が済みましたので帰りますわ。明日、迎えを寄越しますわ!」
「それではごきげんよう」と言い残してクロエヴァは部屋を出ていった。
葛葉はそんなクロエヴァの背中を見届け一言、
「これからまた寝るんだけどな〜」
ごきげんようも何も、葛葉はこれから再び寝るのだ。
「……知ーらないっ」
割れた窓ガラスに何度目かの、視線を向けた。片付けるの大変だろうなと葛葉は思いつつベッドの中に入って行った。
「明日からメイド……しかも貴族令嬢の側近て……」
初日のメイドが就く仕事ではないだろと葛葉は思うが、あの自由気ままな貴族令嬢にはそんな常識はないらしい。
下手したら首が飛ぶのか? と変な考えが浮かび上がって来てしまい、葛葉は「縁起でもない」と呟き目を瞑った。
するとガシィっとすかさず葛葉の身体に抱き着いてくる、もう一人の自由気ままな人物。
「……一回寝たら、何があろうと起きないからねー。いつもそうなら良いのに……」
葛葉は普段ならしないようなことを、鼾をかきながら寝ている鬼丸の頭を撫で、葛葉は欠伸をし、鬼丸の額にキスして寝に入るのだった。
「ん……。?」
ムクリと起き上がり鬼丸が頭に疑問符を浮かべ葛葉を見やった。そして額を手で触れたが、小首を傾げて鬼丸も寝に入るのだった。
その数時間後、朝日が山々から顔を出し、扉をノックする音で葛葉は起こされるのだった。
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これで第六部二章はおしまいです! 三章はメイドとして葛葉達一行が働きます。
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