十三話 理不尽な枕さん
「ふぇぶ⁉︎」
枕は律の顔面に当たり律は素っ頓狂な声をあげて倒れてしまった。
「ど、どうして私なんですかぁ……!」
涙を堪えながら律は悲痛な声で理不尽な枕にそう訴えた。
「……はぁ、クロエ。ここは素直に負けを認めるべきだろう?」
「わ、分かっていますわ……でも、悔しいものは悔しいのですわ!」
このままでは埒が開かないと思ったのか、クロエヴァへ諭すような口調で話し掛けると、クロエヴァはただ悔しいのだとお気持ち表明した。
「……次は負けませんわ!」
ビシィっと人差し指を向けてくるクロエヴァに葛葉は苦笑を浮かべた。
「そ、それで次戦う時に細工出来ないよう、わ、私の近くに居なさいですわ!」
「……ん、それって」
「え、えぇ。そうですわ! 貴方達の護衛を受けると言っておりますのよ‼︎」
赤い顔でそう言ったクロエヴァに葛葉と緋月は顔を見合わせ、思わず吹き出してしまうのだった。
「わ、笑うなですわ‼︎」
「……ふっ。だそうだ、君達を正式な護衛としてこれから扱おう。……アキ、シオン」
笑いを堪えながらアイシュリングは横に居る律達や葛葉を見やってそう口にした。そして扉の外に向かって声を掛けると、
「失礼致します」
「致します!」
ガチャっと扉を静かに開けて入ってくるメイド二人。一人は知っている人物でもう一人は知らない人物だった。
アキは犬の獣人なのは確定で、もう一人は猫の獣人かなと葛葉は思った。
「この方達を部屋に案内してくれ、確か空き部屋があったはずだ」
「かしこまりました」
「かしこま‼︎」
お辞儀をする猫耳メイドとは反対に、アキはビシッと敬礼をして、猫耳メイドに頭を叩かれた。
「では、みなさん。この二人の後を追て行って下さい。これから皆さんが使う部屋に案内しますんで」
「あ、はい」
アイシュリングの言葉に葛葉は返事をして、緋月を持ち上げメイド二人の後に追いて行くのだった。
「ここです」
猫耳メイドが扉を開けると、扉の向こうには豪華な内装があった。
「こ、これ、私の部屋なんですか……」
「はい。使用人部屋になります、私共も同じような部屋を与えられています」
使用人ようにしては豪華過ぎる部屋だったが、現役のメイド本人がそう言うのだから間違い無いのだろう。
葛葉は恐る恐る部屋の中へ踏み込んだ。
「ベッド大きい……」
シングルベッドなのだろうがサイズがダブルベッドで、もうダブルベッドでいいやろが、というベッドがあった。それも二つも。
「もう一部屋、隣にあります。ベッドは四人分しかありませんが、ご覧の通りベッドが大きいので、一部屋三人でも問題ないかと」
「問題ないです!」
猫耳メイドの後にアキが言葉を紡ぐ。そしてそれでまたしてもアキは猫耳メイドに頭を叩かれてしまうのだった。
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