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十二話 悔しいのなら仕方ない、人間だもの

 緋月が葛葉の頬の切り傷にガーゼを貼り、とりあえずの応急処置を終わらせた。


「……痛てっ」


 恐る恐る触るとピキッと痛みがやってきて葛葉は顔を歪ませた。

 あの大爆発に巻き込まれたにも関わらず、葛葉の怪我はかなり軽症だった。


「はい、お終い」

「これやる意味ないんですけど……」

「なぁに言ってんの、葛っちゃん。何でもかんでもスキルを頼っちゃめっだよ!」


 葛葉の『想像』で傷は無かったことにできるのだが、緋月がいつもにも増して過保護に、スキルではない治療を勧めてきたのだ。

 五十鈴や律もそれに同調し、葛葉は渋々従ったのだ。

 不服そうな葛葉の顔を見てニンマリと笑みを浮かべた緋月が、椅子に座り葛葉に向き合って、本題に入った。


「……んでんで、どうだったかな?」

「まぁ、舐めてかかってたら負けそうになってました……」

 本題と言ってもただの揶揄いだが。

「だねぃ、まぁ、怪我前提の戦い方じゃないだけマシだよ」


 成長したね、とポンポンと頭を優しく叩いてくる緋月。何故か葛葉はポワポワと変な感覚を覚え、胸に手を当てた。


「でもこれであの子も君の力を認めるさ、よかったねー」

「……あの、それで少し気になることがあるんですけど……」


 葛葉は緋月の言葉、というか前々から疑問に思っていたことを、緋月に聴くことにした。小さく手を上げてそういってくる葛葉に、んー? と緋月は首を傾げた。


「なんでクロエヴァちゃん? さん? は、あんなことをしてきたんですか?」

「……。そうだね〜、なんと言えばいいか……うん。これは本人の口から聞いた方がいいよ、多分ね」

「……そうですか」


 普段ならいらんことでもなんでも答えるのだが、今回は真面目な顔ですんなりとは答えなかった。


「でもこれで、護衛任務は無事に出来そうだね!」


 クロエヴァの納得を得れればの話だが。

 でも戦って勝って見せたのだ、きっと納得してもらえるはずと、葛葉もそう思たのだった―――。




「―――納得いきませんわ!」

 ベッドの上で不服そうな顔をしながら、葛葉の顔を見て開口一番にクロエヴァはそう口にした。


「嘘ぉん」


 緋月がしょぼん見たいな顔で呟いた。葛葉もえぇ……とうんざりと言った顔で肩を落としていた。


「なんなんですの⁉︎ 最後のあれは! 最後に本気出すなんて卑怯ですわ‼︎」


 バサバサと手で何度も掛け布団を叩き、わーわーと喚くクロエヴァ。そんなクロエヴァの姿を遠巻きに見る葛葉達。


「……つまり、負け惜しm―――」


 緋月が言葉を最後まで言う前に葛葉が口を抑え押し倒した。ぴゃー! と言ってそうな顔で頬を赤らめ興奮する緋月を無視し、葛葉は恐る恐るクロエヴァのことを見た。

 ぷくぅ〜っとフグのように頬を膨らませムスッとしているクロエヴァを見て、葛葉は「あっ」とこの後に起こるであろう展開を察した。


「ま、負け、負け惜しみなんかじゃ……ないですのよ‼︎」


 そう大声で言うと枕を掴みブンッと勢いよく投げつけてきたクロエヴァ。その枕は葛葉には向かわずに、黙って事の成り行きを見守っていた律達へ。ほぼ明後日の方向に飛んでいくのだった。

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