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七話 お上りさん葛っちゃん?

 馬車が停止し、馬車の扉が開けられる。開かれた扉の先にはズラッと並ぶメイド達の姿が。

 そしてその連なる先にあるのは、葛葉の所有している屋敷の五倍は大きな豪邸だった。


「……デカ」


 葛葉は自然と口から豪邸の感想を溢していた。

 多種族のメイド達が瞑目し客人を出迎える。


「鬼代さん、どうぞお進みください!」

「え、あ、はい」


 呆気に取られていた葛葉はアキに言葉を掛けられるまで固まっていた。

 鬼丸は目をキラキラさせながらメイドや花壇、綺麗に整えられている庭園の草木に夢中だ。

 律は萎縮し葛葉の背後に隠れてしまい、五十鈴はただ葛葉の隣を歩くのみ。

 緋月は慣れているのか、どうってことない、と言った顔でズカズカと進んでいく。


「なんか……私達お上りさんみたいでやだな……」


 ただの豪邸如きに、と葛葉は口元を緩ませた。

 そんな時だった。目の前の豪邸の玄関扉が開かれ、中からメイドや執事ではない誰かがやってきた。

 ドレスに身を包み、しっかりと優美な足取りで向かってくる美少女。金髪碧眼と、見るからに貴族令嬢だ。


「―――貴方達が(わたくし)とお父様の護衛ですの?」

「……」


 髪の毛をフサッとしながらそう尋ねてきた美少女に、コクっと首を縦に振ると美少女は目をキッと鋭くした。

 美少女が葛葉に向かって歩き始め、周りのメイド達が頭を下げ、美少女が葛葉の目の前まで来ると、葛葉達を見定めるように隅々見てくる。

 律が萎縮から怯えに変わり、葛葉が緊張していると、


「こらこら、やめないかクロエ。お客人が困っているよ」


 ゆっくりと歩きながら威圧してくる美少女が唯一、頭の上がらない存在、美少女の父親らしき男がやってきた。

 男が葛葉の背後で怯えている律を見て苦笑を浮かべるが、美少女は怪訝そうに眉を寄せると男は振り返り、毅然とした態度で話し始めた。


「お父様……お客人? 違いましょう、この方達は(わたくし)の護衛をする、冒険者ですのよ? なら、(わたくし)を護れるに値するか見定めるのは当然ですのよ」


 結構頭が上がるようで、男はこりゃ参ったなと肩を竦めた。


「まぁ、詳しい話は中に入ってからね。まだ君達は客人だからね……私はアダルバート家の娘として、客人には無礼をしないよう教育したのだけど」

「……分かりましたわ。でも、この方達の力量は(わたくし)本人が測りますわ! 幾らお父様といえど、これだけは譲れませんわ」

「あぁ好きにするといいよ。それがお前のポリシーなんだろう?」


 葛葉達を置いてけぼりにし、どうやら話はまとまったようだ。葛葉が律の手を握ってやり安心させ、男の言う通りに豪邸の中へ入って行った―――。

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