六話 美少女に膝枕されたい
「で、こうなると」
葛葉の膝を枕にして気持ち良さそうに眠る緋月に目を落としため息を吐く。左手はずっと緋月の頭を撫でて、右手はトントンと一定のリズムで緋月の胸辺りを叩いていた。
「いやじゃいやじゃ‼︎ こうなのじゃ!」
「え、えぇ〜! どうなんですか〜⁉︎」
葛葉の正面では鬼丸に膝を枕にされ、律が困惑していた。
「……五十鈴。助けてあげないの?」
「……」
案外五十鈴は薄情なのかもしれない。
葛葉の問い掛けに五十鈴は沈黙で返した。騒ぐ鬼丸と律の所為か、眠そうにしているアキが寝たり起きたりを繰り返していた。
夜通し作業をしていたがため、今は休憩中なのだ。御者は執事が担当している。と言っても執事の話では飛ばせば後半日で着くとのこと。
「葛葉様、今回の護衛依頼」
「ん?」
「おかしいとは思いませんか?」
葛葉の耳元で五十鈴は唐突にそんなことを言い出したのだ。葛葉が「え?」と振り向こうとして顎を掴まれ止められてしまった。
「気付いちゃったか」
「……寝てたんじゃないんですか?」
「うんやぁ? 寝るなんて勿体無いっしょ〜? 葛っちゃんの太腿、柔肌、全てを堪能しないと!」
「キモいですね」
「葛っちゃんの罵倒もなかなか……」とキモい発言を更にする緋月に、五十鈴が早くしろと言いたげな目で見やった。
緋月が肩を竦め声のトーンを落として話し始める。
「五十鈴っちゃんがそう思ったのは、あのメイドちゃんと執事の潜在能力が高いからでしょ?」
「……はい」
「ステータス? どうやって見たの?」
潜在能力はそう易々と見れる物ではない。大抵は冒険者カードに記されている物だ。
なろうのテンプレのようにシステム音声さんや、ステータスオープンさんはこの世界では外出中らしい。ラスベガスに旅行だろうか?
「五十鈴っちゃんは見てはいないよ。でも、あの二人は常人にしてはちっとばかし、ステータスが高過ぎる」
話に付いていけない葛葉は終始頭を捻っていた。それを見越した緋月が、
「潜在能力が高過ぎるとね、特定の種族の人には見えちゃうんだよ。なんてーか、オーラ? そんなのが」
そうわかりやすく? 教えてくれた。
「……じゃあつまり、五十鈴はアキさんやイサオさんのステータスのオーラが見えるの?」
「……はい。主張が激しいです」
「うーん、ボクと観察してたけど……Lv.3以上じゃないかな〜」
緋月にはオーラは見えないが、どうやら普段の動きで分かるらしい。珍しく師匠らしいことをした緋月だった。
「ま、でも所詮は常人だよ。葛っちゃんでも勝てるって」
「大体同じレベルなんですが……」
「んー、いざとなったらそのボディで誘惑しちゃいな!」
「ベリグッじゃないんですよ、それで誘惑できるのあなたと鬼丸だけですよね?」
適当抜かす緋月の頬を抓り、引っ張る葛葉の手首を緋月が掴んで涙目で抵抗する。
「いひゃいいひゃい!」
葛葉は今回のクエストに一抹の不安と、足の痺れを感じつつ、そのまま公爵家へ向かうのだった。
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