四話 あいつわしよりヤバくね?
あの、ノーカンって事にしてくださいお願いします!!
バシャンと高波が葛葉のことを襲った。浴場に入ってほんの一秒もの経っていないのにだ。
「もっとあっち行きなよぉ!」
「ええい、そっちが行くのじゃ! 貴様と仲良しこよしする気なぞ、毛頭もないわ!」
とバシャバシャとお湯を掛け合い、言い争う二人の姿。葛葉は近くにあった木桶に湯船のお湯をたんまりと入れ、言い争いに夢中の二人に近付き頭から被せた。
唐突なお湯に二人が驚き顔を葛葉のいる方へ振り向かせた。
「葛っちゃん⁉︎」
「葛葉よ!」
葛葉の存在にやっと気がついた二人は驚きと共に同じ思考に至った。葛葉の手首を掴み、二人は葛葉を湯船の中へ引き込んだのだ。
「ちょっと⁉︎ まだ身体洗ってないんだけど!」
「いいのいいの!」
「よくないですよ!」
バシャバシャと湯船のお湯が波立つ。逃げようと抵抗する葛葉を二人が更に引き込んで、足を絡ませたり胸を揉んだり腕に抱きついたりなど、海の生物の狩りかとツッコミたくなるようなことをしてくる。
「ぐふふ、軟っこいのう〜」
「鬼丸、今は協力して。じゃないと……」
葛葉の身体を貪り感触を楽しむ鬼丸の頭を掴んで、殺気立った目と声で、
「せっかく今日は一緒に寝てあげようと思ったけど、辞めざるを得ないから」
鬼丸を誘惑した。
「あ、ずるい‼︎ 鬼丸! 騙されちゃダメだよ‼︎」
と葛葉の発言を勿論聞いていてた緋月が声を上げ、鬼丸を誘惑から目覚めさすために声を掛ける。
だがそんな周りの音は一切耳をかさず、葛葉のその言葉を聞いた鬼丸はピタッと静止し、数秒の間の後、
「あ〜‼︎ 裏切り者ぉ‼︎」
緋月の背後に周り、緋月を羽交締めで拘束するのだった。ジタバタと緋月は暴れるが鬼丸の力には勝てるわけなく次第に抵抗するのをやめてしまった。
「……よし」
解放された葛葉は湯船から出て、身体を洗いに向かった。が汚れはほとんどさっきので落ちてしまっただろう。
「はぁ……宿の人に後で謝んなきゃ……」
シャワーを出しながら増えてしまった面倒事にため息を吐いて身体を洗い始めるのだった。
「……このお湯」
「貴様、何考えとる⁉︎」
ふと拘束されていた緋月がお湯をジーッと見つめボソッと声を漏らした。何となくだが緋月の考えを察してしまった鬼丸は拘束を自然と強めた。
「葛っちゃんの美味しい出汁が出てるはずっ‼︎」
「なっ……お、おい葛葉よ! こやつ阿呆じゃ⁉︎ むっ、よすのじゃ‼︎」
ガバッと唐突にイカれた発言と共に暴れ出す緋月に鬼丸はドン引きした。
このお湯に葛葉の出汁があるというのなら、それは緋月や鬼丸からも出ていて当然のものだ。
そう考えただけでも鬼丸は全身の鳥肌が立ってしまいそうになる。
「じゃあボクも葛っちゃんと一緒に寝たい〜‼︎」
割と本気なのか強い力で抵抗してくる緋月に更にドン引きする鬼丸。こやつわしよりヤバくね? と鬼丸は自然と思ってしまう。
そうしてるうちに、緩んだ鬼丸の拘束から緋月が抜け出してしまったのだ。そして次の瞬間には、緋月の口が後数ミリでお湯に付く寸前だった。
その時だった、耳を劈く落雷のような音が二度鳴ったのだ。そして背後にある浴場の壁面に穴が空いた。
「……緋月さん。見えてますし、聞こえてますよー。で、誰の出汁をどうするんですか?」
音の鳴った方を見ると、先ほどのように殺気だった目で見つめてくる葛葉がそこには居た。
読んで頂きありがとうございます!!
色々とごたついてしまったので、今回だけはノーカンって事にしてください! すみません!!
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