二話 地雷原にうつ伏せで倒れる人
「えぇ〜/// 葛っちゃんはもっと凄いのをご所望なのぉ? 全く恥ずかしいなぁ……」
面白がってわざとやっているのか、それとも素でやるバカなのか。答えは両方だ。素でやりつつも鬼丸の反応が面白いからやってるのだ。
「じゃあ今日は師弟逆転ラブラブ濃厚○○○○○○○○○○ごっこ……する?」
それを聞いた鬼丸がガクン、と全身の力が抜かし葛葉は顔を真っ青どころか真っ黒にした。ビリビリと鳴り始め、空気が震え、魔力が吸い込まれ世界が湾曲する。
鬼丸の額に二本の大きな角が顕現したのだ。
「……終わった」
「……ぁ」
「あはは、まずった」
鬼化した鬼丸は鋭い眼光で緋月を見て襲い掛かった。緋月も緋月で、すぐに逃げ回り鬼丸が追い掛け回す。捕まれば即死の正に鬼ごっこだ。
「あ、えと、その……。あはは」
葛葉が助け舟を出してもらおうと律に視線を送るが、律は申し訳なさそうに笑みを浮かべて辞退した。みんな命が惜しいのだ。
「……眠い」
そして葛葉は五十鈴にも求めたがまず論外だった。
「ちょっとぉ⁉︎ 何が起きてるんです!?」
するとまた小窓からアキが中を覗き込み悲鳴を上げた、既にボッコボコになったしまった馬車内を見て。
馬車が急停止するとドガンッと馬車の壁を突き破り、緋月と鬼丸は外に出て行ってしまった。そしてすぐに轟音が鳴り響き始めた。
「あ〜ぁ、もう駄目だ」
「いやはや元気な方達だ」
葛葉も二人を追いかけ降車し、本格的に戦い始めた二人に流石に諦めてしまった。そんな葛葉の横に執事の老人―――イサオが並び立ち、絶対違うだろという感想を口にした。
「……多分、終わる頃にはここら辺の地図が書き換わりますよ?」
「ならばぜひ拝見させていただきたいですな。私も過去は血気盛んでしたので、こういうのを見てしまうと、血が激ってしまいましてね」
(駄目だこの人も)
どうして戦闘狂が三人もいるのだと葛葉が肩を落としため息を吐いてると、チョンチョンと肩を突かれた。
「あのぅ、鬼代さん。馬車の修復と休憩ということで、今日はこの近くの小さな村に寄ってもいいですか? 宿屋もありますし……」
「あぁ……はい。本当にすみません……」
アキの提案に葛葉は申し訳なさそうにしながら受け入れた。泣きそうな顔のアキを見てしまうと、葛葉は罪悪感で押し潰されそうだった。
「では、とりあえずは……あの二方の戦いが終わるまでですね……」
「……ほんと、すみません」
遠い目で緋月と鬼丸の戦いを見やったアキに、葛葉は深々と頭を下げるのだった。
はぁとため息を吐きながら葛葉が馬車の中に戻ると、律がちょこんと一人で、モジモジソワソワと落ち着きなく座っていた。
馬車の中に葛葉が入ってきたのに気が付いた律が立ちあがろうとした時だった。
「え、あの、葛葉さん⁉︎」
葛葉が立ちあがろうとした律の肩を抑えてそれを阻止し、律の隣に座り込むと体勢を変え座席に仰向けに寝転がったのだ。驚きしどろもどろの律に葛葉は意地悪な笑みを浮かべて言った。
「罰、さっきの罰〜」
「うぅ……すみません……」
口をもごもごさせながら律はなんとなくだが謝るのだった。
葛葉に膝枕を強制させられ、五十鈴が肩に寄り掛かってきていてと、律は身動きが取れなくなってしまうのだった―――。
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