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十四話 訂正

超絶遅れてしまいすいません!

 ―――葛葉はギルド長室を後にし廊下を歩いていた。

 そんな時だった、


「―――前提が間違ってるよ、葛葉ちゃん」


 通り過ぎた廊下の角から声が掛けられたのだ。立ち止まり振り返ってみると、そこには葉加瀬が立っていた。

 いつもより、より一層真面目な顔をして。


「あの子は油断をしていない。あの戦いにおいて、油断をする者が……後に【戦帝】などと呼ばれるわけがないだろう?」


 どうやら緋月の話は全て聞いていたらしく、緋月の自分を蔑んだ話の訂正に来たようだった。


「それに英雄は言ったんだ、『星を眺める者(スターゲイザー)を救う』ってね」


 その言葉を聞き葛葉は少なからず衝撃を覚えた。

 言葉を喉に詰まらせ困惑した。油断も隙もあるはずがない戦いで、先代の英雄がそんなバカなことを言っていたことに。


「傲慢にも英雄は、あの厄災を救える道を見出したんだ。私は初めてそれを聞いた時に正気か? と聞いたがね」

「……結果が」

「あぁ、英雄は死に、賢者も消滅し。緋月は自責の念に囚われ、破滅の道を歩み出しそうになった」


 それが今の世界であり、葛葉がこの世界に望まれてしまった原因だ。ふざけるなと葛葉は思う反面、邪竜を救いたくなる気持ちは、葛葉にも痛いほど理解できてしまうのだ。

 葛葉は救えなかったから。


「つまり、何が言いたいかと言うと。……悪いのは英雄だ。緋月のせいじゃない、自業自得なんだ」


 と緋月が聞いたら起こりそうなことを平然と葉加瀬は口にした。

 それを聞き葛葉はチラチラと辺りを見た。


「緋月さんが聞いたら大変なことになりそうですね……」


「ん? いや、問題ないさ。……あの子も分かってるだろうし」


「そうなんですか?」


 緋月の話を聞いていた限りそうは思えなかったが、どうやらそうだったらしい。

 つまり緋月が本当に教えたかったのは、


「意固地になって、周りとの関係を断って孤立するなって……ことなんですね」

「あの子も素直じゃないからね……というか、君の前ではカッコつけたいんだよ、きっと」


 なんとなく葉加瀬の言っていることに納得してしまう。きっとこの場に緋月がいたら、顔を赤くして葉加瀬のこと叩いていただろう。


「……葛葉ちゃん」


 そんなほんわかした空気が、葉加瀬の纏う雰囲気によってぶち壊された。

 葛葉が何を言われるのかと身構え固唾を飲み込んだ。そして葉加瀬は間を開けてゆっくりと口を開いた。


「この世界は【英雄】を欲してる、でも、それ以上にこの世界は【英雄】に厳しい。……君は、どうか頑張って欲しい。この世界で貪欲に生に執着し、強欲だろうと仲間や救いたいと思うすべての人々を救ってくれ」

「……は、葉加瀬さん?」


 白衣のポケットから手を取り出し、葉加瀬は葛葉の両肩に手を置いた。

 真っ直ぐ葛葉と葉加瀬の目線が混じり合う。葉加瀬の美貌に葛葉が目のやり場を困らせていると、


「それが私の復讐となるから。この世界への復讐だ」


 ニコッと微笑んだ。

 その破壊力は絶大で葛葉はその微笑みを凝視した。きちんと話も聞きながら。


「…………っ。復讐、ですか?」


 ハッとフリーズしていた葛葉が動き出し、葉加瀬の復讐という言葉に疑問を抱いた。


「あぁ、【英雄】に厳しいこの世界にね。……それに緋月を傷付けたからね」

「? 今なんて……」

「あー、いや気にしないでくれ。……つまり何が言いたいかというと、頑張ってくれ。それだけだよ、それじゃあね」


 ポンポンと葛葉の肩を叩き葉加瀬は行ってしまう。葛葉は去っていく葉加瀬の背中を見つめ、葉加瀬の言葉を思い出した。

 復讐、世界は英雄に厳しい。果たして自分がこの世界で、今の生活を守れるのか、不安に思う葛葉だった。

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