九話 戦闘メイド……好こですわぁ
「葛葉様。ここは魔族との戦いになれば激戦となる、重要な街なのです。王都からここへ来る途中には山間部があり、兵を送るにはかなりの時間が掛かります。ですから魔族からすれば絶対に占領したい街ということです」
「だからボクとか葉加瀬がここに居るんだよねー」
と五十鈴の説明と、緋月の補足も相まって葛葉の疑問は更に深まってしまった。
「あの、それじゃあ公爵家程の貴族をここに置くのはもっと駄目じゃ?」
「うん、普通ならそうなんだけどね」
その葛葉の疑問に緋月は、うんうんと首を上下に動かして首肯すると、
「この世界の貴族って強いんだよね」
「……強いんですか?」
「そそ。なんせこの国の王族の血統は【始祖の英雄】だからね。アダルバート家も充分強い上に、兵士も多く持ってるからさ」
と緋月や五十鈴の説明を一通り聞いた葛葉は、納得した顔を見せるが、まだ引っ掛かる点があった。
「なるほど……でも強いなら冒険者を護衛にする必要なんて……」
「ない。ことはないんだよね。……今回アダルバート家の令嬢を狙ってるのは、帝国の暗殺ギルドの暗殺者なんだよ」
またしても帝国からの厄介ごとなことについて、葛葉はまたかと苦笑を浮かべた。
とにかくアダルバート家の護衛の件は理解出来たが、まだ理解出来ないことはある。
それは、
「それで緋月さん。護衛のことは理解したんですけど、それとこの格好は何か意味があるんですか?」
葛葉達の格好だ。
護衛にメイド服をわざわざ着させる意味がわからない。そんな表情で緋月に問うてみると、緋月は小刻みに肩を震るわせて笑い始めた。
「……ふっふっふっ」
そんな緋月に冷たい視線が向けられるが、緋月は高笑いし、普通に真面目な顔で、
「いや、護衛だってバレないように。新しいメイドを雇ったって体で、アダルバート家の護衛依頼を受けたからだね」
「なんですか今の高笑いは⁉︎」
理にかなったことを言う緋月に、葛葉はもれなくあの無意味な高笑いにツッコミを入れるのだった。
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