七話 着せていいのは、着せる覚悟のある奴だけだ!
遅れすみません!
「あ、久しぶり〜、葛葉ちゃ〜ん」
「お久しぶりです、千佳さん」
「本当だよね〜。最近は全く来てくれないからさぁ、私のこと嫌いになったのかと思っちゃったよ〜」
邪竜討伐やらなんやらで、まずこの街に居なかったのもあるが、何よりも葛葉本人が武具屋に赴く必要がないため、仕方がないと言えば仕方がない。
だが先日の戦いにて、ついに、あの戦闘服がボロボロのみそっかすとなってしまった。それを直して貰うと言うことでここに足を運んだ訳だ。がそれら全ては勝手に緋月がやろうとしてるだけのことだが。
「それで〜? 今日はどんな用事かな〜?」
ドサッと箱を適当な場所に置いた千佳が、カウンターに肘を付き頬杖をしながら二人を見やった。
すると緋月が頬杖をしている千佳の前に赴き、葛葉の戦闘服をカウンターの上に置いたのだ。
「んとね、ボクの頼んでた物の受け取りと……これの修復依頼だね!」
と来た理由を言うと、千佳が戦闘服を手に取り、ゆっくりと動き出した。
「OK、緋月の注文の品はもう出来てるよ〜。……んで、これが戦闘服、ね」
手に取ったボロボロの戦闘服に視線を落とし、千佳はすんっ……とした顔で呟きをこぼした。
そんな千佳の姿を見ていた葛葉は本能的に目線を逸らすのだった。
「……葛葉ちゃん」
「は、はい!」
声を掛けられてしまった葛葉は、十字を切り目を瞑りながら返事をした。そんな葛葉のオーバーリアクションに緋月が、あははと微笑を浮かべつつ、葛葉の背中をトンッと叩いてくるのだった。
その衝撃に目を開けると、目の前には千佳が戦闘服を手に持ち、首を傾げながら口にした。
「私の防具は、役に立ったかな?」
それは鍛冶師としては当然の反応なのだろう。ボロボロの戦闘服を見て、装着者を大きな怪我なくきちんと守れたかどうか気になるのは。
「……はい!」
「ん、良かった〜……。倒したんだね、邪竜〜」
「はい……、倒しました!」
葛葉の返事にホッと息を吐いた千佳は、もう既に世界中に伝わっているであろう邪竜討伐の現実を、やっと実感したと言わんばかりの表情を浮かべるのだった。
「それじゃあ〜、この服は直しておくね。……あと、はい緋月、これが注文の品ね〜」
「おっ! どもども〜!」
ボロボロの戦闘服を丁寧に畳み千佳は修復依頼を受け付けるのだった。そしてカウターの下から五着の畳まれた服を取り出した。
それを嬉々として緋月は受け取り、ニッコニコでその服を見るのだった。
「あの、緋月さん?」
「ん? んあ、これ?」
緋月の喜びように疑問を感じた葛葉が尋ねると、緋月はニシシと笑みを浮かべながら服を一着広げたのだ。
バサッと広げられた服は誰がどう見てもメイド服だった。
「……じゃじゃ〜ん! どうどう? 可愛いっしょぉ〜?」
「あぁと、そうですね。……で、誰が着るんですか? スミノさんですか?」
レイド服を着る人物なんて葛葉の中ではスミノや五十鈴しか思いつかない。
その上見た目だけでもう戦闘向けの服という事が分かる設計。ならば一人しかいないのだが、緋月は葛葉の予想とは全く違った反応をした。
「んぇ?」
「え?」
二人とも目を点にし首を傾げ「んー?」と何かがおかしいことに疑問符を浮かべた。
「もちろん、葛っちゃん達だよ?」
「……は?」
当然だろう? みたいな緋月の反応に、葛葉はただ短くそう声を発するだけだった。
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