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六話 お久なお店

 忙しない朝の後は、のんびりまったりと自室で休める、という幻想(イマジン)はブレイカーされてしまった。

 緋月が葛葉の手を取り駆け出す。二人は今、街の大通りを歩いていた。


「緋月さん、転びますよ!」


 葛葉とのデートが嬉しいのか跳ねながら走る緋月に、ヒヤヒヤしながら葛葉はその後に追いていく。


「葛っちゃーん! これこれ! これ食べたい!」


 立ち止まった緋月がそう言いながら指を指す店は、串焼きの屋台だった。焼き鳥屋みたいな物で、いい匂いが午前中から辺りに漂っていた。


「まだお昼前ですよ?」

「いいのいいの! 美味しいもんは常時食べてないと!」


 既に財布を取り出して謎理論を自慢げに語る緋月に、葛葉は苦笑してしまった。

 大量に注文する緋月の背中を見つめていた葛葉は、自分も財布を取り出していることに気付いていなかった。


「そっちの嬢ちゃんも買っていきな、小腹空いてんなら。ほれ、一、二本食べていき!」


 緋月の注文を受け付けた店主が、テキパキと手を動かし串焼きを焼きつつ、財布を取り出していた葛葉に声を掛けた。

 顔に出ていたのか葛葉の買おうか迷っていた本数を言い当て、すぐさま準備に取り掛かる姿に、葛葉は申し訳なさそうに二本注文するのだった―――。

 ―――愛しそうにバクバクと串焼きを食べていく緋月。そんな見た目だけなら可愛い緋月を見て、葛葉が微笑むその様は、まるで仲睦まじい姉妹のようだった。


(……最近串焼き多いな)


 ふと、何回も串焼きを食べてる記憶がやってきて、葛葉は不思議に思い首を傾げた時だった。

 突然、緋月が足を止めたのだ。


「ほい、到着〜」

「……ここって」

「そう! ……お久の『リリナ工具店』でーす!」


 どうやら緋月の目的地は、葛葉の今着ているこの服の原型を作った武具店だった。


「本当にお久ですね」

「ここんところ来てないって千佳が愚痴ってたよぉ? いくら、君がナイフを使い捨て感覚で創造して、特定の武器を持たならいからって来なさすぎだよぉ……って」

「うっ……耳の痛い話です」


 事実その通りなのが反論の余地がなくツッコめなかった。


「いい機会だからさ、これ、直してもらいなよ」

「ん〜……ですね、ボロボロになってしまいましたしね……で、なんで勝手に持ち出してるんですか?」


 緋月が懐から取り出し「直してもらいなよ」と言うのは、葛葉の戦闘服だった。

 確か部屋に置いていたはずなのだが、何故だか緋月の手元にあった。……何故だか。


「さぁ出発進行!」

「あ! はぐらかさないでくださいよ!」


 ぎこちなく歩く時点で確信犯だが、緋月はそそくさとぎこちない足取りで店の中に入って行った。

 全くと呟いて、葛葉は急いでその後を追うのだった。

 カランカランと店の人へ来客を報せる、懐かしいドアベルの音が鳴り響き、葛葉は店の中を見回した。

 前と変わりはなく色々な武具が並べられた壁や棚があった。


「わっ、何これたっか〜」

「……緋月さん、あんまり触らないほうがいいですよ」

「触らずして武具とは言わんのじゃ! ガハハ!」


 店に入って、店内の中央にある武器に目をつけた緋月は早速その武器を弄り始めたのだ。

 その光景に葛葉はソワソワし始め「止めないと」という使命感に駆られ緋月に寄ろうとした時だった。


「―――それは100万フェルする高級品だからね〜」


 と店の奥から何かしらが入ってるであろう、少し大きな木箱を両手で持った千佳が出てきたのだった。

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