三話 ダサい男
気持ちの良い涼しい夜風が肌に当たり葛葉は空を見上げた。見上げた先にあるのは赤い空では無く、綺羅星の光がある夜空だった。
「……ええん? 皆んなと飲まんで……」
「……気付いてましたか」
夜空を見上げていると、葛葉に背中を向けていた一が声を掛けてきた。
「……え、どしたん? その服」
そして振り返った一は葛葉の服装に驚いた。
ハート型のニップレスでB地区だけ隠された胸と、マイクロ問題過ぎるビキニで隠された股。そのほかは逆バニーだった。
完全R-18な格好に、一は手に持っていたコップを落としてしまった。
「アレに」
「あぁ……可哀想に……」
葛葉が親指で指す方には、女性冒険者や女性ギルド職員にセクハラの限りを尽くす緋月の姿があった。
葛葉もその中の一人だ。
「あの、それよりも一さんの方こそ、いいんですか、みんなと飲まないで……」
今の一の心情は誰がどう見てもグチャグチャなのは分かりきっていることだった。
気遣いが苦手な葛葉ですら必死でするほどに。
「………………見つかったらしいで。アイツ」
「っ」
葛葉から視線逸らし、一は顔を俯かせる、俯かせたと思えばすぐに顔を空へ向けた。
「立っとったって……魔獣の死体ん中の真ん中で。探索隊に保護されるまで立っとった。せやけど、見つけてもらてからすぐに膝から崩れ落ちたらしいで……はは、ダサいやろ?」
一は笑ったが葛葉は静かに顔を伏せた。一の頬に流れる涙を見ないように。
「なぁ、ダサいやろぉ? ……アイツは」
震える始めた声になっても、一は罵倒をやめなかった。
「ダサいねん……」
クシャッと一は左手に持っている一枚の紙を握り締めた。葛葉がその音に視線を向け、紙をよくよく見てみると小さな字の下に大きな字で、『好きだ』と書かれていた。
それを見た葛葉は自然と歩き出し、ずっと夜風に吹かれて冷えていた一の身体を抱きしめるのだった―――。
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