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六十三話 真実を求め

誠にすみません!!

「開け、真実を隠す扉よ」


 詠唱を紡ぎ本棚が淡く発光しだし透け始めた。そしてそのまま本棚は光の粒子となって消えていった。

 後に残ったのは奥へ続く薄暗い廊下のみ。


「さぁ、行きましょう」


 葛葉達へ振り返りイズモはその奥へと進み始めるのだった。そして葛葉は律と五十鈴と顔を見合わせてからイズモの後に続いた。

 部屋に残ったミハヤはイズモが判を押した書類の整理を黙々と始めるのだった。

 ―――しばらく薄暗い廊下を歩き続けたが、まだまだ廊下は続いていた。

 律が五十鈴の肩に手を置いて脱力し、もたれ掛かると捨てられたり、長い長い沈黙に耐えられなくなったイズモが葛葉に世間話を持ち掛けたりと、先程の雰囲気が吹っ飛んでしまうほど長い廊下だった。


「……あんまり使うことは」

「な、無いですね……」


 葛葉の言葉を遮り、イズモは恥ずかしそうに言った。


「そうなんですか……」


 と少々驚き、自信満々に先に進んでいたイズモのことを思い出しクスッと笑ってしまう葛葉。

 そして静まり返った時、イズモは絞り出したような声で葛葉達に声を掛けた。


「我々は皆様を騙し、彼女らを邪竜と決めつけ、討伐させたわけではありません。此度の戦い、我々は多くの死を目の当たりにしました」


 独白のように語り出すイズモの言葉を葛葉達は黙って静かに聞いた。


「我々の目的は邪竜を討伐……いえ、―――殺すことでした」




「―――久しいのう、玉藻前(たまものまえ)


 鳥居の上で座り足を組んで、月を眺めていた九尾の狐に鬼丸は声をかけた。


「……久方ぶりの邂逅で何を言うかと期待しおっていたら……まったく。気付いておったではないか」


 

 すると狐は顔だけを向けてゆっくりと話しだした。


「それになんじゃ? その喋り方は」

()いじゃろう?」

「キャラが被りおる、故にやめるんじゃな。……して、わざわざ武蔵まで一っ飛びしてまで、笑に会いに来た理由は一体なんなのじゃ?」


 見上げてくる鬼丸を見て、おかしそうに肩を振るわせ口元を、着崩した着物の袖で隠した。

 見下ろしてくる狐に、鬼丸がムッと顔を曇らせると同時に花弁が舞い散った。


「ふむふむ、邪竜についてじゃな? ……ん? 何故お主が邪竜のことを? 必要なかろう?」


 次には目の前に降りてきていたのだ。

 思考を読んだのか、それとも鬼丸の顔に出ていたのか、玉藻前はそう的確に鬼丸の聞こうとしていたことを言ってしまうのだった。が疑問に思ったのか首を傾げた。


「勝手に心を読むでない。わしが聞きたいのは、『八岐大蛇』についてじゃ」


 邪竜という存在がなんなのか、それは嫌と言うほどに知っている鬼丸は、ただ『八岐大蛇』の言動が気になり、傍観者である彼女に尋ねに来たのだ。

 あの『八岐大蛇』という邪竜が、元はどんな"少女"であったのか。




『―――そう、ならよかったよ』

「ええ、英雄は無事でありんすえ。っ、死傷者は三千人以上出たでありんすが……」

『はぁ、手放しに喜べないねー、邪竜を倒したってのに……』


 魔水晶に映る緋月と対話するサワ。提出された被害規模や死傷者の詳細な人数の乗った書類を見ながら、眉根を寄せ緋月と同じように天井を見上げた。

 死者数、冒険者53人、東帝国兵2996人の合計3049人、重軽傷者1684人。と明記された書類を思い出しため息を吐いた。


「予想以上に多いでありんすね」

『君の予想はどのくらいだったのさ〜』

「死者千、負傷者三百といったところでありんす。少ないに越したことはありんせんから」

『あはは、戦いに希望的観測はダメでしょー』


 サワの答えに机に突っ伏していた緋月が起き上がり、笑いながら水晶をツンツンしだした。


「……そっちも大変だったそうでありんすが? 被害はいくらほどでありんすかね〜?」

『へ? ゼロだよ? あ、土木業の人達の仕事が沢山用意されたくらいかな〜?』


 先ほどの緋月の態度に少しムカッときたサワが、緋月を煽ろうとしたところ、ゼロという言葉に絶句した。


「……本気出したでありんすね?」

『はて?』

「はて? ……じゃありんしょう⁉︎ まったく」


 緋月が本気を出せば地図を書き換えることも可能であり、一度目の前で見たことのあるサワにとっては、想像しただけでも昏倒しそうになるほどだった。


「それにしても報告と違う形態になるなんて、予想外過ぎでありんすえ……」

『大変だったねー』


 肩を落とすサワとは違い緋月はお気楽そうに机にベタっと突っ伏した。それを見て、サワは緋月に一つの疑問を投げ掛けた。


「聞いても良いでありんしょうか?」

『んー? なんでい?』

「邪竜とは一体……なんなんでありんしょうか?」


 前英雄と共に邪竜を相手にしていた緋月なら、その答えを握っているやも知れないと、サワは無神経なのを承知の上で緋月に尋ねるのだった。

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