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六十二話 カチコミじゃーい!

 カツ、カツと月明かりの差し込む廊下に足音が響く。そして足音はとある一室の前で止まり、扉をノックする音が鳴った。


「―――どうぞ」


 中から声が聞こえ、一拍置いてからゆっくりと扉を開けて中に入った。

 中は緋月のギルド長室に似たような部屋が広がっていた。その部屋の書斎机で書類に目を通していたのは——祈りを捧げた——追悼式を終えたイズモだった。そして隣にはミハヤが居た


「……英雄様? 如何しましたか?」

「―――率直に聞きます。……『邪竜』とはなんなんですか? 『八岐大蛇』の本当の姿は?」

「? 英雄様……?」


 イズモのいる部屋に乗り込んできたのは少し険悪な雰囲気を纏った葛葉だった、

 質問の意図も分からずに困惑して居ると、葛葉がゆっくりとイズモの下へ歩き出した。


「答えて下さい……! 邪竜とはなんなんですか⁉︎」


 ただ事じゃないと判断したイズモは席から立ち上がった。何か英雄の逆鱗に触れたのかと、


「―――それ以上は看過できん。今すぐに退がれ、さもなくばその首を切り落とす、【英雄】だとしてもな」


 そんな時だった、イズモとあと数歩の距離になったと同時にミハヤが抜刀し、刀を葛葉へと向けたのだ。

 【英雄】へ危害を加えることは、あのギルド長と一線を交える覚悟をしなければならないのだ。


「っ、ミハヤ!」


 それを危惧しミハヤの名を呼ぶが、ミハヤは、


「イズモ様、これが私の仕事です。どうかお赦しを」


 仕事である以上刀を向けなくてはならないのだ。


「―――葛葉様!」

「葛葉さん! 落ち着いて下さい!」


 すると開け放たれていた扉から【英雄】の仲間の二人が入ってきては、状況を察したのか【英雄】を羽交締めしイズモから距離をおかせた。


「ミハヤ」

「はい。……して、何事だこれは」


 刀を向けていたミハヤが納刀し、今し方起きたことの説明を求めた。葛葉本人ではなく、その後ろにいる仲間の律と五十鈴へ。


「あ、あの……それが」

「……葛葉様はただ、真実を知りたいだけなのです」


 言い淀む律を遮って五十鈴が前に出て来ては、毅然とした態度でそう口にした。


「葛葉様は邪竜は悪という認識のもと此度の戦いに参加しました。ですが……全く違った」

「く、葛葉さんは、疑問に思ったんです。邪竜とは何かと……それでその、このような空気に……」


 悪とは思えないほどに、葛葉と『八岐大蛇』の戦いは圧巻だった。

 憎悪や憎しみ、憤怒や嫌悪を感じるよりも、二人は同情や哀れみを感じたのだ。


「だとしても、先程の態度はあまりにも危険だ。私以外ならば即座に切り捨てられていたぞ!」


 葛葉達の弁明を聞いたミハヤは、はぁため息を吐いて小言を口にした。

 律と五十鈴が目を逸らし、葛葉も先程の雰囲気は無くなって同じように目を逸らしていた。落ち着いたのだろうとミハヤがまた短く息を吐き、イズモを見た。


「如何しますか、イズモ様。彼女達なら話しても問題ないかと……」

「……もちろんお話しします」


 瞑目し少し間を開けてからイズモは覚悟を決めた。

 身体の向きを変え本棚へと向かった。

 そして本棚に向けて手を翳し魔法陣を展開させた。

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