十四話 違った道の果てに……。
意味深なこと言ってますけど、実のところ浅いんですよね。
――三十分前――
無事再会を果たした澪と五十鈴は一頻り泣き、久しぶりの親子での会話をしながら館から出ようと、廊下を歩いていた。
五十鈴はすっかり元気となり、小さ頃とは全く違う。クールでカッコよくて、凛とした表情に南は憧れていたが、今はニッコリと可愛らしい笑みを浮かべて居る。それ程までに嬉しいのだろう。
「……え? 里から避難?」
「そう。なんか、魔王軍の幹部が攻めてきてるんだって」
「そ、そんな状態なのに助けに来てくれたの?」
「こんな状態だからこそよ」
保身を忘れて、我が身可愛さで自身のたった一人の娘を見捨てるような親では無いのだ、澪は。
抜けているようで、全てを見透かしているかのような感覚が彼女と居ると感じてしまう。
だから和が尻に敷かれているわけだ。
「……?」
ふと南が窓の外を見ると同時に足を止めた。
前を歩く二人は数歩歩いて、南が足を止めていることに気付く。そして二人は顔を合わせて、首を傾げる。流石は親子と言った所だ、まるでシンクロしているかの様な顔合わせだった。
「澪さん、五十鈴ちゃん。……先にこの里から出て下さい」
「えっ?」
「南ちゃん?」
唐突な南の発言に、更に首を傾げる二人。
南の視線は二人には向いておらず、ずっと一点を見続けている。その先にはきっと何かがあるのかもしれない。
五十鈴はそう思い、窓の外を見ようと窓の方へ近付こうとして止める。南が二人に先に行けと言っている。それは何故か。
決まっている二人が、今南が見ている光景を見てしまったら、きっと逃げないからだ。
逃げずに原因を排除する。どんな相手だろうと、排除しようとするのだ。
「……五十鈴。行きましょう」
「お母さん……」
澪も察し、五十鈴の手首を掴み、作り笑みを浮かべて言ってくる。五十鈴はどうするか数瞬迷い、南の目を見て、
「南ちゃん……。戻ってきてね」
「……うん。また、遊ぼうね」
そう言い交わし、二人は違う道を歩み始める。絶望か希望か。それは、進んだ先にある。歩みはもう止めれない、戻れない。
進み続けた先に――。
――全てがある。
五十鈴と澪と別れてから数分、館の窓から飛び出し里へ向かう。腰に携えている携帯武器、大鎌を使えるようにし、走るスピードを速くする。
窓の外、南が見た光景とは、里に一目散に走る和の姿だった。逃げるとか裏切るとかじゃない。あの顔は今まで知らなかった事実を知った顔だ。
「主人!」
南が和に着いていく理由は、憧れだ。
誰にも優しく、誰からも好かれ、皆んなが口を揃えこういう『あの人は聖人』だと。嫌となる程聞いた。
だが、事実そうなのだ。
南は和に返しきれない恩がある。本人にしてみれば、きっと些細な事と笑い飛ばすだろう、でも……でもっ——‼︎
読んで頂き、ありがとうございます!
今日は遅くなってしまった……。せめて七時くらいにはあげようと思います。