五十六話 殿
遅くなったのと、内容が少なく、すみません!!
―――怪我人を担ぎ荒い呼吸の部下達を尻目に、アサヒはひたすらに足を動かしていた。
「副隊長……!」
「分かっとる‼︎」
段々と縮んでいく距離にシオリが冷や汗を垂らしながらアサヒへ叫んだ。
そのシオリの叫びにアサヒは苛立ちをぶつけるように、同じくらいの声量で声を返した。
アサヒだけ残っても犬死ににしかならないため、今はただ逃げるしかなく、ジリジリと迫る死に兵達の心が徐々に折れていっていた。
(……邪竜が倒されよったら、徒党を組んで縄張りを取り返しに来よってからに!)
と背後の魔獣達を睨め付けながら悪態を心の中で呟いた。『八岐大蛇』の魔力は邪竜なだけあって、とてつもない覇気と量に、そこらの魔獣達は怯え逃げるしかないのだ。
だがその『八岐大蛇』が殺されたことによって戻って来たのだ。
「―――アサヒさん!」
「ッ⁉︎ 英雄、なんで来よった⁉︎」
前からやって来た葛葉にアサヒは仰天し、声を上げてしまった。葛葉は既に臨戦態勢であり、そのやる気満々な姿を見て「まったく」とため息を吐いた。
「殿は任せて下さい!」
「アホかっ! んなことさせる訳ないやろが!」
突飛なことを口にした葛葉にアサヒは正気を疑った。
だがキリッとしたその目に、アサヒはそれ以上何も言わなかった。
「……好きにせい。―――んなこと言うと思ったか⁉︎」
「えっ、嘘つき」
「最低です、副隊長」
「んなこと言っとる場合かっちゅうねん‼︎」
しゅん……とする葛葉と悪ノリするシオリにアサヒは、額に皺を寄せ苛立ちを全面に出していた。
「こちとら死ぬ気やぞ⁉︎」
とふざけてると思われる葛葉達を怒鳴り刀を抜いた。
「来るで……‼︎」
その警戒の合図と共に大型魔獣の一体が森から飛び出して来たのだった。
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