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四十八話 誰が救うか、それは

「……ここからが、本当の戦い。……英雄()は君を救う」

『・・・英、雄』


 無機質な顔に、虚な目に光が灯った。

 葛葉は見た、先代の【英雄】が彼女を救おうとしたのを。そして『八岐大蛇(彼女)』が助けを求めていることも。


「でも君の意思をきちんと知りたい。君が心の底から助けてって、新しい英雄()に言ってくれたら……」


 ただ見ただけなのだ葛葉は。

 見ただけで考えなしに救うなんてことは出来ない。


「私は英雄だから」

『……っ‼︎』


 フラつき頭に手を置いた『八岐大蛇』は攻撃を再開した。

 葛葉は気を抜かずにいつ攻撃が来てもいいように構えていた為すぐに反応できた。

 飛び避けてすぐに後ろの地面が爆発した。


「話合い……したいんだけどなっ!」


 足元に落ちていた刀を脚で蹴り上げ、手元まで浮かせ刀の柄を蹴る。刀は『八岐大蛇』へ真っ直ぐ飛んでいくが、銃弾でもない刀が当たるとは思っていない。


(一秒稼げればいい!)


 刀を蹴り投擲してすぐに駆け出す葛葉。『八岐大蛇』の警戒心は多少なりとも刀に向いている。

 葛葉はその隙に横から攻撃するつもりなのだ。


「―――ッ!」


 だがそんな葛葉の脚が掴まれた。見てみれば足首に影が纏わりつくように絡みついていたのだ。

 そして噛まれる痛みを感じたと同時、葛葉の身体は遠くに吹っ飛ばされた。


「ッ‼︎」


 背中を木に強打する寸前に身を捩り、葛葉は右半身を木に強打した。

 腕の骨が粉々になって肩の感覚もなくなり(あばら)も数本が砕けた。


「ァ……づッ‼︎」


 何度大怪我してもやはり慣れない激痛に、涙を浮かべ疼くまってしまう。すぐに『想像』での回復を行おうと思うのと、『八岐大蛇』が攻撃するタイミングが被ってしまう

 葛葉がほんの少し気を緩めた瞬間に腹部を蹴られてしまった。爪先が減り込み吐血し、身体もほんの少し宙に浮くが背中への踵落としにより、直ぐに地面に叩き付けられた。


「うッ……くッ」

『違う』


 痛みに顔を歪める葛葉に『八岐大蛇』は一言そう言った。そして葛葉の身体をまた吹っ飛ばした。

 受け身も取れずに葛葉は地面に落ちてしまう。全身の痛みに動けないでいると、


『あなたは違う』


 一瞬で距離を詰めた『八岐大蛇』の目と目が合った。

 次の瞬間には葛葉の身体は影に持ち上げられていた。四肢を掴まれ首にも影が纏わりついていて。四肢を掴む影はグググと音を鳴らしていた。

 無機質、無感情、光のない瞳、葛葉はその顔と目を見てフッと笑った。

 『八岐大蛇』はその笑みの理由が分からずにたじろいだ。


「すごく……辛そう……っ」


 その葛葉の呟きに『八岐大蛇』は顔を見た。葛葉の顔はとても慈愛に満ちたそんな顔だった。

 葛葉に気を取られること二秒ほど、『八岐大蛇』は背後から迫り来る存在に気が付くのが遅れてしまった。

 振り返り腕を突き出し攻撃を受け止めようとして、腕が切り飛ばされてしまった。痛みに影の力が弱まる、『八岐大蛇』が振り返るともうそこには葛葉は居なかった。

 ———『八岐大蛇』から少し離れた場所に葛葉は居た。


「……ありがと」

「―――葛葉さん‼︎ 大怪我じゃないですかぁ‼︎」


 葛葉が助けてくれた人物に感謝すると、食い気味にその人物は葛葉の怪我の具合を心配したのだった。

 もちろん心配してきたのは律だった。


「いくら葛葉さんの立てた作戦だとしても……こんなに!」

「いいの、これも手筈通りだから」


 律は本来なら起きるはずがなかったのだ。怪我の具合を鑑みても二日は眠りに就く大怪我と、五十鈴とスミノは言っていた。

 それでも律は起きたのだ


「それに作戦じゃ、もっと酷い怪我になる予定だったけど……やっぱり律が良いタイミングで来てくれた。私は律を信じてるもん!」

「……っ。く、くずばざぁん‼︎ 大好きでずぅ〜! 一生側で着いて行きまず〜‼︎」


 ゴニョゴニョと不満を口にしていた律には、先ほどの言葉が最適と葛葉は判断した。ただ、葛葉の本心を口にしただけだが。律は涙を流しながら葛葉を抱きしめた。


「よし、それじゃ次が最後の手順だし、最後の戦いだよ」

「はい!」


 律は葛葉の言葉に力強く頷いた。その顔を見た葛葉は、少しクスッと笑ってしまう。

 気を取り直し、葛葉は律の顔を真っ直ぐと見て、


「気を付けてね!」


 律にそう言うのだった。つい先程まで大怪我で寝ていたのもあるし、まだ怪我が治りきっていないが故に。

 それと葛葉はしれっとお姫様抱っこしていた律から降りるのだった。


「はい‼︎ 絶対に生きて、葛葉さんの下に帰ります!」

「え、それ死亡フラ……」

「それでは行って参ります‼︎」


 しれっと危うい言葉を口にした律を止めようと、手を伸ばしたが律はもう既に遠いところに行ってしまっていた。


「……よしっ」


 葛葉は自分の身体の大怪我を治して、律の後に続いて駆け出すのだった。

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