四十五話 誰かの所為であって誰の所為でもない
そんな雰囲気をぶっ壊し、片手剣の冒険者が立ち上がった。そして葛葉を指差しながら鬼の形相で睨め付けてきたのだ。
「……ふっざけんな‼︎ ふざけんなよっ‼︎」
そして森中に響き渡るような大声で怒鳴り出したのだ。
「シュウヤ、やめなさい!」
「うるせぇ‼︎ なんで、なんでリーダーが‼︎ なんで、どうしてっ……‼︎」
葛葉は顔を俯かせては、ただその怒りを受け止めた。
「お前がっ‼︎ きちんと仲間のお守りしとけば‼︎」
「やめなさいって言ってるでしょ‼︎」
葛葉に近付き手を出そうとした冒険者―――シュウヤを止めるミヅキ。
つい先ほどまでイサオの亡骸に涙を流していたのにだ。
「なんで、邪魔すんだよ‼︎ こいつのせいでリーダーは死んだんだぞっ‼︎」
「違う‼︎ この子の所為なんかじゃないし、誰の所為でもないっ‼︎ これはあいつの意思‼︎」
「意思……だぁ⁉︎ ふざけるな‼︎ そんな意思になったのも全部こいつの所為じゃないか‼︎」
葛葉に怒鳴り散らかすシュウヤの発言を否定しようとするミヅキだが、シュウヤの言っていることに少しだけ共感してしまう所為か、力強く否定出来なかった。
そんなシュウヤの隣には、泣きながらイサオの名を呼び続けながら回復魔法を何度も掛ける神官が居て、ミヅキは崩れ落ち顔に手を当てた。
ミヅキが息を吐くと同時にシュウヤの首元に光の剣が、神官の口には布が詰め込まれ塞がれていた。
「もう、やめて……」
イサオの開いたままだった瞼を閉じてミヅキは弱々しく泣き出した。
シュウヤもそれを見て膝から崩れ落ちた。そしてイサオの手を取り、その手を頬に当て泣き始める。
神官は相変わらず魔法を掛けながら呻いていた。
「……」
葛葉は俯いたままその場から離れた、スミノと共に。
「葛葉様……」
五十鈴が葛葉へ恐る恐る声を掛けた。が葛葉は黙りこくる。
五十鈴が拳をギュッと強く握ると共に、空が影で覆い隠されたのだ。
『―――っ⁉︎』
そして全員がその影がなんなのか考える暇すらないまま、空の影から地面へと無数の龍が落ちてくるのだった。
葛葉が空を見ると真上に龍が見えた。
真っ直ぐ葛葉を狙って、何匹もの龍が葛葉たちの居る一箇所に落ちてくる。
「……どうすれば」
『創造』を使おうと身構えた時、ピキッと頭に頭痛が走り『創造』を止める。対抗手段がない葛葉はただ見るだけしか出来なかった。
それでもナイフだけは構えた。
「……っ」
刺し違える覚悟で葛葉は身構えた、その時だった、何匹も居た龍が弾け飛んだのだ。
バラバラになった肉塊が四方八方に飛び散り地面を紅く染めた。
そしてそれは至る所でも起きていた。龍たちが弾け飛ぶ音が、弾け飛んだ肉塊が止まない。
「まさか、鬼丸……?」
葛葉がそう呟き空を見上げた。
精巧な影の龍たちが『八岐大蛇』の攻撃なのだとすれば、今戦っている鬼丸こそが龍たちを木っ端微塵にした張本人なのだ。
目には見えないが鬼丸がどうにかして無数の龍を撃破してるのを思い浮かべて。
それと同時に、覚悟を決めた。次で最後の攻撃にするために―――。
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