四十一話 ガチンコ勝負は全力で
遅れてすみません!!
鬼丸の持つ魔法の一つ『星降る夜、久遠の東雲』は術者のステータスと術者の身につけている武具の性能を向上させる。
かなり長い詠唱がネックになるが、素で最強の一歩手前の鬼丸からしたらまさに鬼に金棒だ。
「500年ぶり……じゃな」
駆け出した鬼丸は『八岐大蛇』の猛攻を真っ向から受けた。ブレスや尻尾の攻撃が飛んでくるが、それらを平然と避け続けた。
時に破砕し、避け、粉砕する。
『八岐大蛇』との距離は完全になくなっていた。懐に潜り込み鬼丸は金棒をフルスイングしようとした。
「のう、『八岐大蛇』。うぬも本気を出さんか、出さなければわしには勝てぬぞ?」
もちろん応答はない、だから鬼丸は金棒をフルスイングした。
眼前にいた筈の『八岐大蛇』の姿が消え、背後にあった木々が吹っ飛び地面が何十メートルも抉れ、曇天のようにあった雲が今は一つとてなかった。
大地震のような振動が終わり鬼丸の背後にいた兵士たちや冒険者達は改めて戦慄した。
鬼丸という異常な存在に。
「……そうよなぁ。そう簡単にはくたばらぬよのう?」
鬼丸が顔を上げる先にはバサバサと翼で浮遊し、地面にいる者達を睥睨する少女がいた。
「こっからじゃ、ガチンコは」
「……」
心底愉快そうに口角を上げ鬼丸は金棒を少女へと向けた。その時だった、少女の背後から何本もの影が這い出てきたのだ。
「一個はそこにある故、残りの七本はそう出すのじゃな。こりゃ数的不利かのう〜?」
一見すればそうだが、相対するは鬼丸だ。
「うぬを救う者は決まっておるからのう、わしはそれまで時間を稼ぐだけじゃ。まぁ、倒しても良いがのう? 主食前の前菜ってわけよ、まぁ……少し重めの前菜じゃがのう‼︎」
ドンッと鬼丸が跳躍するたびに地面にクレーターが生まれてしまう。足下が悪くなっていっていても鬼丸は攻撃の手を緩めなかった。
金棒を置き格闘を猛攻の中に加えた。
右拳を突き出し『八岐大蛇』が避ける先であろう場所に蹴りを放つ、蹴りが当たり弾かれる先に左拳を振るう。
そんな動作が高速で繰り返されていた。
時たまに変化を加えたりもして。
「チッ、あんまじゃな」
目に見える傷は負っていない『八岐大蛇』に鬼丸は思わず舌打ちしてしまった。
地面に着地し金棒を手に取った。肉弾戦が駄目というならば、圧倒的な力に任せるのみ、と鬼丸はそう考えたのだ。
二人の少女の姿が掻き消える。
次の瞬間音を置き去りにして火花が散った。
それは瞬きをする間にあちらこちらで起こるのだった。
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