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十二話 親子の再会

感動の再会ですね……(T ^ T)

「んぐぐぐ、ンンンン! オラァ! はぁ、はぁ。……い、いや助けろー‼︎」


族長の館の地下。和は頭をクッションとなった馬糞の中から抜き出し、二人に向かって叫んだ。


「……全く、あーくっせ」


馬糞にハエが集り、鼻を捻じ曲げるかのような強烈な臭いが充満している。

真っ暗な部屋、太陽の光が届かない地上からかなり下の中に居るのだ。


「早く、見つけねぇと……会ったら臭いって言われるかもな」


部屋の扉を探し出し、ドアノブを回し扉を開く。

扉の向こうには長い長い廊下が続いていた。真っ暗な廊下は無限のように続いており、どちらが地上に戻れる道なのだろうか分からない。


「うーん、ここは勘で」


少し考え、和は廊下を右へ走り出す。その都度部屋があり、一度見てみたが何もないただの空き部屋だった。

走る速度を上げると、まだまだ遠くだが松明の光と上に続く階段が見えた。

最後の扉も。


「……何だ?」


扉は少し開かれており、中からは先の部屋とは大違いのいい匂いが漏れ出ており、自然と身体が中へ入っていく。

中に入り、直ぐに目にしたのは紙が一面中に貼られ、テーブルの上に手帳のような物が置いてあった。

テーブルに近寄り、古臭い手帳を手に取り開くと、そこにはその日の記録――日記が記されていた。




「――ここです」

「……五十鈴」


五十鈴の部屋は二階にあり、南と澪は五十鈴が居るであろう部屋の前に辿り着く。

部屋の取っ手には、頑丈そうな南京錠でロックされており中の者も鍵を持たない外の者も開けることは出来ない。


「……でも、これ、どうしたら」

「任せて下さい」


南がそう言うと、腰に携えていた一本の棒――大きさは三十センチ程度の棒だ――それを取り外し、棒を両手で持ち捻る。

瞬間、棒が勢いよく伸び一つの武器へと変形していく。持ち手だけで一メートルあり、全てを断ち切る事が可能に見える巨大刃。

ただの小さな金属の棒が、全長一七八センチの大鎌へと変わった。


「下がっていてください」


澪を後ろに下がらせ、南は前へ歩み出て扉に鎌を向ける。瞼を閉じ、自身の内に秘められた力。鬼の力を行使する。

足をダン! と床を壊すかのように踏み付け、深く息を吸い瞼を開ける。

同時に空地が重くなり、周囲の魔力が大幅に削り取られ、待機中の魔力の均衡が崩れてしまう。


「――っ、鬼化……」


澪は胸を抑え壁に手を付け、バランスを取る。鬼化とは、周囲の魔力、魔素、魔力の根源、全魔力を吸い取り本人の力を増幅させる。

魔力だけではなく、自分自身の生命力すらも奪ってしまうのだ。

澪の体調が急に悪くなった理由は、鬼化にある。


「はぁああああああああ‼︎」


鬼の咆哮を上げ、大鎌を斜め上段へと一閃。すると綺麗に壁が真っ二つとなり斜めへ滑り落ちる。

一部壁が壊され、飛ばされた部屋の中が現わになる。部屋の中、中央に正座で座っている少女がいた。


「……五十鈴っ!」

「五十鈴さ……ちゃん」


澪が駆け寄り、南が友の名を口にする。南は十二年越しの親子の再会を見守る。

澪が涙を流し、五十鈴は澪に抱かれて何が何だか分からないといった表情。


「お、母さん……?」

「五十鈴……! 五十鈴っ‼︎ ごめんなさい、ごめんなさいね。あなたを迎えに来るのが、助けに来るのが遅くなっちゃって……ごめんなさい」


澪は五十鈴を更に強く抱き締めて離さない。十二年、十二年も離れ離れだったのだ。澪が話せてたのは五年の間のみ。でも、でもこれで、嫌と言うほど話し合って笑い合えるのだ。


「あぁ……神様。ありがとう、ございます……」


天に、神に、星に、五十鈴は長年の願いが叶った。

もうあんなことは二度と思わないだろう。だって、だって……こんなにも嬉しくて、こんなにも幸せなのだから。

五年と言う短い歳月の間だったが、五十鈴は両親を愛してるのだから。


「……っ。南、ちゃん?」

「はい……ううん。そうだよ、五十鈴ちゃん。十二年ぶりだねっ!」

「……そう、だね」


二人の少女の友情は、この十二年の間、消えることはなかった。

読んで頂き、ありがとうございます!

自分の文章力で感動させることが出来ましたら幸いです。

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