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三十五話 好機は一瞬で

 そしてそれは一瞬だった。消し飛んだ山から見える街に一瞬で光線は辿り着いたのだ。


「あれ……って……」

「結界やな、ギルド長が守っとる……」


 その光線を受け止める薄緑色の半透明な壁。火花のような何かを、散らしながらも光線を防いでいた。

 葛葉の呟きにアサヒが答えた。

 その場の全員の視線はその結界に集中して居た。


「でも、この威力の魔法じゃ……」

「長く保つ、なんちゅうことはあらへん。止めんとあかんのや」


 葛葉の当然な意見にアサヒは頷きながら刀を構えた。魔法を行使している『八岐大蛇』を止めるために。

 その時だった。遠く離れている街の結界に罅が入る音がしたのは。


「っ」

「な、なぁ……これあかんとちゃうん!?」


 その光景に周囲の兵士達、冒険者達がザワつき始めた。一のそんな言葉のすぐ後、パキッパキパキ、パキンッとガラスの割れる音が響いた。

 だがとっくに限界を迎えて居た結界は、ジェンガのように崩れ始めた。


「お、終わりだ……」


 誰かがそんなことを言った。

 それが原因かは分からない。だが、その声がした次にはガチャンと、東帝国兵達が次々に膝を地に着けた。

 冒険者も顔を覆い、頭を抱え、地面にへたり込む。

 誰もが「終わりだ」とそう思って居た時だった。

 崩れた結界が渦を巻き始め、光線がその渦に巻き込まれていく。


「間に合った……」


 そんなミハヤの呟きを聞き、葛葉は一瞬だけミハヤを訝しみ顔を向けるが、すぐに結界へ戻した。

 全て呑み込まれた光線は崩壊した結界と同化し、小さな球となった。

 そして光線は再び放たれた。お返しだと言わんばかりに。


「総員! 巻き込まれるな―――ッ!!」


 ミハヤの掛け声を認識すると同時に光線が『八岐大蛇』へと直撃した。

 眩い光線が頭上を通っていく。衝撃やらなんやら、人体に悪影響しか及ぼしそうに無い光線は、『八岐大蛇』の身体を8割消し飛ばした。

 葛葉が目を開けた時にはそうなっていた。


「……っ! 今だ!! 魔石が露出している今しか好機はない!!」


 唯一戦況を早く理解したミハヤが、『八岐大蛇』の身体から露出している魔石を狙った。それと同時に立ち上がり始める兵士達や冒険者達に支持を飛ばした。

 全員がその声を聞き走り出した。『八岐大蛇』の再生はもう始まっている。時間は本当に残りわずかだ。

 葛葉も走り出した。己の俊敏を此処で活かすために。


「早っ!」


 通り過ぎていく葛葉の背中を見ながら(にのまえ)は笑みをこぼした。いつだって最後を飾るのは決まっているのだから。

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