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三十一話 疲れ果てたなら

かなり遅れてすみません!!

「無事ですか⁉︎」

「っ、す、少し……」


 言い淀みながら葛葉は今までの比にならない痛みに堪えながら、駆け寄ってきたミハヤに笑って見せた。

 そして『想像』する。傷だけは綺麗さっぱり消えた。


「―――あかんで! 気ぃ付けや‼︎ そいつなんかしとるっ‼︎」


 真逆に折れ曲がった左腕に手を添えながら吠える(にのまえ)の言葉に、葛葉とミハヤは顔を見合わせた。

 今起きた高速移動はなんなのか。その時だった。


「―――・・・う、そ」


 神聖魔法を扱う首が吹っ飛んでいる筈なのに、『八岐大蛇』の足元に神聖魔法の魔法陣が展開された。

 首を吹き飛ばしても『八岐大蛇』は殺せないのだ。

 神聖魔法が発動する。千切れ、爆散し、木っ端微塵となって居た八本の首は何事もなく元の状態へと戻った。

 蓄積して居たダメージ諸共。


「そんな……ウチらの今までは……」


 無駄、無意味、無意義、そんな言葉が頭の中に浮かびあがる。

 流してきた血も汗も、全てが無意味だった。血反吐を吐いて怪我を負った時間全てが。

 ドサッと一の戦意がへし折れた。苦渋に塗れた顔で立とうとするミハヤも、形だけだ。

 葛葉も先ほどから消えて無くならない痛みに頭が壊れそうになって居た。スミノは木影で倒れ意識を失っている。

 今戦えるのは鬼丸一人だけだ。


「……痛い、辛い。・・・もう、疲れた」


 弱音を吐いたって誰からも声を掛けられない。誰も居ないからだ。

 【英雄】として立ち上がらなくてはならない、だがそれは今じゃなくても良いのではないか? そんな考えが脳裏を過っていく。

 家に帰っていつも通りの日常で自堕落な日々を過ごしたい。そう願ってもいいだろう、葛葉はお釣りが来るほどに頑張ってきたはずだ。

 だから、目を瞑って意識を手放して、楽になろう。


『―――本当にいいのか?』


 楽になって夢を見よう。幸せな夢を。


『―――後悔はしないか?』


 痛くもない、辛くもない、何も感じない幸せな夢を。


『―――聞こえていないフリはやめろ』


 割れたガラスは二度と元には戻らない。だから仕方のないこと。


『―――これは義務だ。救え』


 ―――誰を?


『―――泣いている子を』

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