二十七話 怪物
(―――エグすぎるやろ‼︎ 体幹壊れた思たわ!)
ミニガンの超重量で身体が吹き飛ぶのを防いだ一は、角を生やしたそれを見た。
殺気に満ち溢れた目にオーラ。鬼丸が『八岐大蛇』に近付くために歩き出すが、一はそれに恐怖を覚えた。
パニック映画やホラー映画で怪物や幽霊が、隠れている自分の目の前を通過していくような緊張感と恐怖。
恐怖に足が自然と震え始めた。それは隣にいる者も同じだった。
「あれが……」
「舐めとった……あれはマジもんの怪物やったな……」
鬼族の巫女の伝説を知らない者はいない。
最強最悪の巫女。各種族の巫女たちが人々の為に力を使う中、鬼族の巫女は戦いに使い続けた。
ただそれが鬼族の為なのも否めなが。
「―――一さん!」
唖然としている時、葛葉の声が耳に届いてきた。
次にはドサッと背中の衝撃とすぐ真隣での地震かのような振動が届いてきた。
パチパチと瞬きを繰り返し目の前の美麗な顔を見た。
「大丈夫ですか……?」
「え、あ、あぁ大丈夫やで……」
葛葉の問い掛けに一は呆気に取られながらも答えた。
そして振動が来た方を見やると、そこには竜の頭があった。
「……いや、全然大丈夫ちゃうかったわ、あかんわ。死ぬところやったやん⁉︎」
圧死したかもしれない可能性に顔を青くした。
「な、何が起きたん⁉︎」
「……えーと、鬼丸が『八岐大蛇』の首を引き千切ったんですけど、引き千切ったのを投げ捨てたんです。それが一さんの方に……」
「マジかいな! 後で文句言うたろ」
何が起こったかを葛葉は苦笑いを浮かべながら答えた。それを聞いた一は少し腹を立てたが、今は何も言わないようにするのだった。(鬼化した鬼丸が怖いので)
「はぁ……ほんま、どないなっと―――っ‼︎」
竜の頭を回って鬼丸が戦っているであろう場所を見た一は言葉を失った。
視線の先には首を半数以上失い崖に叩き付けられ、崖の崩落に巻き込まれた『八岐大蛇』が、鬼に腑を引き摺り出されている光景だった。
血が湖のように広がっていき、臓物が転がって、血に染まる鬼丸は溢れてくる殺意のままに臓物を引きずり出し続けた。
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