二十六話 最強の鬼の最強の形状
「―――余は古今無双。余は海内無双。余は天下無双。強者故に汝らに宣告せし運命は、其は非道なる殺戮の宴。しかとその目に焼き付けよ、そして魂に刻み込め。我が名は鬼神魔王ッ‼︎」
そんな詠唱らしき言葉を述べ鬼丸は空を仰いだ。
すると途端に暗雲が立ち込め始め赤い空を覆った。そして忽ちに雷鳴が轟いた。
「天地開闢の一振り、味わってみるがいいのじゃ‼︎」
そんな台詞を鬼丸が言うと同時に、周りの大気がグニャンと目視で分かるほどに一瞬だけ歪んだ。
そしてすぐに溜まっていた水槽の栓を開けるように、魔力が渦を巻いて鬼丸へと流れていった。
すぐ目の前で魔力が膨れ上がり、世界が恐怖する。
そして額から大きな角を生やした鬼丸は大地を陥没させる程の力で踏み込んで駆け出した。
一歩また一歩踏み出すたびに地面が陥没していく。それはまるで巨大な怪物が通った後のような陥没だった。
怪物が駆け、大地が揺れ動く。振動が木々を揺らし、地面が悲鳴を上げる。だが怪物の歩みは止まらない。
「……暴走ってのは無いと思うけど、全然味方に見えない……」
鬼丸が踏み込み跳躍した地面は隕石が落ちた跡のようで、文字通り鬼気迫る鬼丸の姿は何度も言うように、獣か怪物のようだった。
ニッコリとした顔は鬼という名に相応しいものだった。
「勝ったな、源泉食ってくる……」
鬼化した鬼丸の強さを知っている葛葉は自信ありげに勝利を確信した。
そして目の前では鬼丸の攻撃が『八岐大蛇』へと炸裂した。その時、鼓膜が破れたと錯覚するほどの爆発音と共に葛葉の身体を十メートルほど吹き飛ばすほどの風に似たものがやってきた。
だが葛葉は踏ん張ることでそれを凌いだ。
炸裂した一本の首―――『蒼首』は一瞬にして蒸発するように吹き飛び、その真隣にいた『黒鳶』も同様に吹き飛んだ。
一瞬にして吹き飛んだその二つの首と違い鬼丸の攻撃を喰らった残りの五本は、その衝撃によって身体が粉々に砕け首が裂けた。
首の根本が半分ほど千切れ大量の血が吹き出した。
だがそれらは一瞬にして起きたことであり、その場に居た三人には全く何が起きたのかは理解できなかった。
ただ三人の共通する認識としては『目視することすら出来ない超速の大振りの攻撃が炸裂した』と言ったものだった。
だが一つ付け加えるとすれば、葛葉と一の認識としては『音速を越えた大振りの攻撃』だった。
読んで頂きありがとうございます!!
面白いと思って頂けましたらブックマークと評価をお願いします!!