二十五話 希望が差し込む
―――地面に降りた二人は近くの木の影に隠れ、早速情報交換を始めた。
意外と上手い鬼丸の絵に少し驚く葛葉だったが、鬼丸の声に気を切り替えた。
「わしらが戦った首は六本じゃな。赤、黒、緑に青、白、茶の模様がはいっとった。して、葛葉の方はどうじゃ」
「私達は、黄色のと後は……なんの色の模様も付いてないのだった」
鬼丸はふむと呟いて何事か考え始めた。
黄色の模様の首の属性は雷で、攻撃範囲がとても広かった。無色の首は無属性、単純な物理攻撃が必死の威力だった。
「わしが思うに、怪しいのは此奴じゃな。切り落としても直ぐに再生する他の首、そしてわしと一とが唯一戦っとらん首じゃ」
「白い模様の……?」
「あぁ。他の首同様に属性持ちだとすれば、此奴は神聖属性じゃな。神聖属性ならば回復魔法が使えるのじゃ」
「じゃ、じゃあ」
「そうじゃ。この首を切り落とせば、奴のタフネスは無くなる訳じゃ」
勝利の道程が見えてきた。そんなような顔を葛葉は浮かべた。
内心喜ぶ葛葉とは反対に鬼丸は難しい顔を浮かべていた。
「問題はあの首を守るように、他の首が戦っておることじゃな」
数分前の戦闘を思い出し、鬼丸は苦虫を噛み潰したような顔で言う。それを聞いた葛葉はしゅん……とあからさまに気を落とした。
分かりやす過ぎる行動と表情の葛葉に苦笑し、鬼丸は立ち上がって地面に描いていた絵を踏み消した。
「ここじゃな、ここで決めるのじゃ。決着を付けるぞ」
「……っ? 勝てるの……?」
唐突に手を伸ばしてそう言ってきた鬼丸に、葛葉は目を点にして尋ねる。
すると鬼丸は不敵な笑みを浮かべた。
「そんなのは二の次じゃろうて。……うぬが居る、わしが居る。それだけじゃ、それだけでこの戦いは勝てる」
「どういう理屈?」
「愛は最強なんじゃぞ!」
鬼丸の意味不明な言葉の羅列に「こんな非常時に」と肩を竦める葛葉だったが、鬼丸の手を取った。
勝算があるのか、どんな作戦なのか、そんなことは聞かずに。
「本気……出すんでしょ?」
「……あぁ、そうじゃな。ここからが本番じゃ、竜如きが鬼には勝てんことを知らしめてやるとするかの」
『八岐大蛇』を見据え鬼丸は金棒を地面に突き刺した。鬼丸の言う本番が何か、薄々気が付いた葛葉は少しだけ鬼丸から離れた。
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