二十二話 頑張った人には五十鈴の膝枕です
―――スースーと寝息を立て気持ちよさそうに眠る律の傍、五十鈴は律の頭を撫でていた。
「―――ちょっとした魔力欠乏症やって?」
そんな五十鈴に声を掛けてきたのはアサヒだった。
律の介抱もアサヒの部下が担当してくれており、色々と助けられたのだ。眩い光の起きた時も、五十鈴が孤立しないようにしてくれたのだ。
「はい、それと疲労です。即興の技を連発して、最後にはなけなしの魔力で魔法を使ってしまいましたので」
「ははは、えらいヤンチャな子ーやな! ……せやけど、成したことはえらいことやで。Lv.7相当の魔物を単独撃破やからなぁ」
律が戦ったあの骸骨―――正式名称『餓者髑髏』。
特別な環境、特別な現象が起きなければ出現しない希少な魔物だ。
「それに魔獣も百は倒してるんとちゃう?」
戦場に転がっていた魔獣の数はパッと見でも70以上はあると、アサヒは言っている。
Lv.7の魔物、Lv.2〜4の魔獣の同時討伐。早々なせる芸当では無いのだ。
「えらいこっちゃや〜」
手に持ったコーヒーカップに口つけ一口啜り、アサヒはジッと横になってる律の直ぐ近くに置いてある刀を見た。
誰がどう見ても分かる技物。魔剣や聖剣よりも、遥かに高額になるだろう。
「とりあえずはまだまだ休んどき〜、そんで、後でその技物も見せてぇな」
「はい、律様に打診してみますね」
「よろしゅうなぁ〜。―――ほな、動ける奴は着いてこんかい、周りの安全を確保すんで‼︎」
『はい!』
アサヒはコーヒーを一気に呷ってから飄々とした雰囲気を纏いつつも、強い語気で休憩をしていた部下や冒険者達を立ち上がらせた。
ゆっくりと部下や冒険者達は動き出すのだった。
ぞろぞろと大人数が移動する足音がそこら中から鳴り始めた。その時だった、ピクッと律の手が動いたのだ。
「……今はゆっくりと、お休み下さい」
五十鈴はその手を優しくギュッと握るのだった。
すると眉間に皺を寄せていた律の顔がゆっくりと安堵していった。
それから暫くして、五十鈴は律の手を握っている手と反対の手を見やった。
血まみれの手を。
「……律様は凄いですね。助けられなくても敵討ちは果たして、勝った……」
自分には出来なかったことが、律には出来たのだ。
凹凸だらけの盾を見やり傷だらけの自分の身体も見た。
みっともなく気持ちいいくらいに負けた自分。葛葉の隣に立つに相応しいのは……、などと五十鈴が思っていたその時、
「―――っ」
ギュッと五十鈴の手律が握り返してきたのだ。
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