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二十話 回帰せぬもの

 ドサドサ、そんな音が絶えず律の耳に入ってくる。圧倒的に魔獣相手になら優勢、だが律は焦っていた。

 一刻も早く魔獣達の数を減らさなくては、と。


「……っ。―――我流剣術『桜花連斬(おうかれんざん)―――ッ‼︎』」


 次々に律は新たな剣技を生み出しながら戦っていく。

 桜花のように美しく舞う剣舞が、風もなく魔獣達の命を刈り取っていく。

 刀はまるで自身の手の一部のように扱えるため、どんな激しい動きをしても、どんなに無茶な動きをしても、刀は思うがままに扱える。

 その上、既に数十を断った刃は一つの刃毀(はこぼ)れも無かった。


(これが本物の家宝……っ⁉︎)


 前までのは若干刃毀れしていそう、とそう感じてしまっていたが、今のは全く持って刃毀れなど微塵もないとはっきり思えてしまう。

 返り血もほんの少し動かすだけで刀の刃から離れていく。刃毀れも錆も問題なく、重さも丁度いいという何もかもが完璧だった。


(でも、武器に使われるようじゃド三流っ! 武器を使い熟さないとっ‼︎ 私はあの人を追い越すんだ‼︎)


 自然と刀の握る力が強くなった。それと比例するように、『虎徹(こてつ)』が淡く光を放ち始めたのだ。

 次々に襲いかかって来る魔獣達を斬っては、攻撃を避け、斬っては、攻撃を避ける。首が上半身が、腕が、手が指が、魔獣の身体の色々なものが飛び散る。

 一時的に魔獣の数がドッと減り、立ち止まって刀を持ち直し律は深呼吸した。


「戦死者の(わだち)を踏むことならん。『兵どもが夢の跡』」


 ふと、魔獣たちは気が付いた。自身達の足元に季節外れな夏草が生い茂っていることに。

 そして赤い空に浮かぶ遠い太陽の光を反射する刀にも。


「……死者一人一人に、人生があったんです」


 ゆっくりと歩いて来る律の顔を見やる魔獣達。


「あなた方は魔獣、それは当然理解しています。あなた方に人情を問うような馬鹿な真似はしません。ですが、命の重さは知ってもらいますっ‼︎」


 命の代償は人や魔獣、どんな種族にとっても均一なものであるはずなのだ。それを残虐に奪ったということは、される覚悟があるということなのだ。

 夏草が揺れる、それと同時に魔獣達が後退りした。

 律の背後に骸骨に殺された兵士が、魔獣に食い殺された兵士や負傷兵が。ずらずらと歩いているかのようなそんな錯覚を見たのだ。

 律の新たなる魔法。ほぼ皆無に等しい律の魔力を全て消費して使える魔法だ。

 その効果は死者の怨念、時代を問わず、死者の想いが強ければ強いほど律を強くするのだ。


「命は回帰しないことを知れ」


 普段なら使わない強い口調で律は刀を構えた。

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