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十五話 伴侶なので

葛葉には自覚して貰いたいですね!

 膨れ上がった影が真っ直ぐかと超高速で葛葉へと迫った。普通の人間ならば、避けられず死を迎えるはずだった。首をひょいっと動かしただけで、見事に躱したのだ。


「葛葉よ! はぁ、はぁ……危ないことをするでないっ!」


 血相を変え、急ぎ足で駆け付けて来た鬼丸が、葛葉の頭にポンと手刀を喰らわし、葛葉へ小言を言うのだった。


「あぅ、カッコつけたっていいでしょ〜?」

「命をやりとりをしている最中に何言っとるんじゃ!」


 また再びポンと葛葉の頭を叩き、短くため息を吐き、鬼丸はやれやれと肩をすくめた。


「―――あのぉ‼︎ そこでイチャつかれてもぉ‼︎ 邪魔なだけなんやけどぉ⁉︎」


 と遠くから切羽詰まった(にのまえ)の声に、二人は顔を弾かせた。

 羨ましいのか、とニシシと笑う鬼丸とは反対に、葛葉はカァっと顔を赤くさせていた。

 そんな二人を尻目に「まったく」と呟き、『八岐大蛇』攻撃を避け、一は再び魔法の準備を始めた。


「『弾幕砲火(バラージ)』」


 ミニガンの六連の銃身が回りだし異音が鳴り出し、そして夥しい数の銃弾が『八岐大蛇』へと降り注いだ。

 一発一発の威力は弱くとも圧倒的なまでの物量によって鱗が剥がれ割れ、剥き出しになった生肉に弾が減り込み血を吹き出させた。

 『八岐大蛇』の悲鳴が(そら)に上がるが、一は無慈悲に銃撃を続けた。『八岐大蛇』の身体から血が溢れ出した。


「足止めしとくのじゃぞ‼︎」

「分かっとる!」


 銃撃によって『八岐大蛇』が足を止めたのだ。首をくねくねとさせ、銃撃の被害を最小限に抑えようと必死だった。

 『八岐大蛇』の下に駆け銃弾の雨を掻い潜った鬼丸が金棒を大きく振りかぶり手の力を抜いた。すると金棒は重力に従って落ち始め隕石のような痕を残した、『八岐大蛇』の身体から地面に衝撃が伝播したのだ。

「まだまだじゃぁ‼︎」

 『八岐大蛇』の体にめり込んでいる金棒を引き抜いて、グルグルと回しちゃんと持ち、鬼丸は胴の次に首を狙った。

 またしても隕石が落ちたかのような音が鳴り響いた。

 なぜ『八岐大蛇』の首が千切れ飛んでいないのかが不思議なほどに。


「チッ、硬いのぅ……‼︎」

「鬼丸っ」


 舌打ちし悪態を吐く鬼丸の背後から、葛葉が飛び出した。阿吽の呼吸か、以心伝心か、たった一言声を掛けただけで、二人は見事な連携を見せた。

 飛び出した葛葉の手をとった鬼丸が、鬼丸の馬鹿力+遠心力を用い、葛葉を投げ飛ばした。

 葛葉は刀を『創造』し切先を『八岐大蛇』へ向けたまま、『八岐大蛇』の首に高速で刺さった。

 そして縦にでは無く横に刀を引き抜いた。

 ドバドバと溢れ出す血を頭から被った葛葉だが、構わず次の首に攻撃を(けしか)けた。

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