十四話 暇もなく
「……そろそろですね。スキルが使えるはずですよ」
「え……っ、ほんとだ」
疑問を解消しようとスミノに声を掛けようとしていた時、スミノがそれを遮るようにスキルのことを言ってきた。
スミノの言う通り使えるようになっており、忽ちに葛葉の全身の酷い怪我が治っていった。
火傷も骨折も、何もかもが。そして風呂上がりのように清潔になった身体が、ボロボロになった戦闘服から露出していた。
「緋月様のために……写真を」
ガサゴソとスミノは不穏なことを呟き懐に手を入れた。葛葉がぎょっと、スミノに目を向けて懐に入れている手を掴んだ。
「やめて下さい……」
「……ですが、緋月様のためにも」
「やめて下さい……ッ‼︎」
顔を赤くさせ懇願する葛葉に気圧され、スミノは渋々懐から手を出すのだった。
ホッと安堵して、葛葉は武器を『創造』した。せっかく時間をかけて組み立てた銃は、何処にもあらず、武器は『創造』するしかなかった。
「鬼代様、ご武運を」
「……はい!」
何度目かの「ご武運を」貰って葛葉は『八岐大蛇』に向かって走り出した。
スミノにはまだまだ聞きたいことがあったが、戦力不足な今、一秒でも早く戦闘に加勢しなくてはならない。葛葉は渋い顔をしながらも走るのだった。
―――『八岐大蛇』との戦いは激戦でありながら、拮抗していた。鬼丸が空中を陸地のように扱い、一が見事な槍術で『八岐大蛇』の攻撃を受け流す。
そしてミハヤが長巻を用いて『八岐大蛇』の足を払った。ズシンと地響きが鳴り大地が揺れた。
たった3人でも『八岐大蛇』は足止めすることが出来ていた。
「淡き焔よ、身を守る灼熱の大気を纏い」
戦闘に入る前に葛葉は詠唱を紡ぐ。葛葉の身体が淡い光によって包み込まれ始めた。
「敵を焼き尽くす」
ナイフを構え『八岐大蛇』に向かって、地面を踏み締め地面を爆砕させ、跳躍する。
「日輪の冠を―――ッ‼︎ 『紅焔凱―光冠―』」
葛葉の斬撃が『八岐大蛇』の『爀首』に大きなバッテンの傷を作った。葛葉の紺の髪に小さな太陽を模した飾りの黄金の冠が載っていた。そして地面に着地すると同時に、淡い光が赤いマントへと変わった。
「……っ」
ピキッと走る痛みにピクッと葛葉は眉を動かした。スキルで怪我は無くせても、疲労は消えない。
足や手、全身が疲労に喘いでいる。
「英雄殿!」
葛葉が立ち止まっていた時、後ろから切迫したミハヤの声が聞こえた。声に気付き、周りを見回した時だった。
『八岐大蛇』の影が大きく膨れ上がっていたのだ。
その影の近くには『黒首』が居て、葛葉のことを見据えていた。影には魔法陣が刻まれており、少なからず魔力も感じた。
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