十三話 絶望的な状況で
遅れました、すみません!
―――眩い光で包まれた時、スミノは一の防御魔法に、葛葉は鬼丸が構えた金棒によって守られた。
だが隙を生じさせぬよう『八岐大蛇』は攻撃を嗾けてきた。『爀首』、赤い模様が入った一本が葛葉達に体当たり攻撃をしたのだ。
そこで葛葉はかなりの強さで弾かれ頭部を強打し、受け身を取れずに落ちた影響で右手足を複雑骨折したのだ。
『八岐大蛇』とはかなり離れていたミハヤ達の下にも被害は及んだ。動ける魔術師は十数人、魔獣の群れを相手にするのですら危ぶまれる数だ。
怪我を負った葛葉や兵士たちは一時救護所へ運ぼうとした際に、次は魔獣の方で異変が起きた。
虚空に亀裂が走り中から無数の魔物・魔獣が飛び出した。『百鬼夜行』と言われる、魔物・魔獣の大行進のことだ。
一時的に開いた亀裂はすぐに閉じたが、出てきた魔物・魔獣の数は先ほど戦っていた比ではない。続々と前線から負傷者が送られてきているのだ。
三十分ほど前に増援が来たばかりだが、全くもって状況は好転していない。なんなら、悪いままだ。
スミノはそんな絶望的なこの状況を葛葉に丁寧に説明した。
その話を聞いて葛葉は俯き何事かを考え始めた。そして、ゆっくりとスミノの顔を見て、
「……私、どれくらい寝てました……?」
「一時間半程です」
葛葉の問いにスミノは間を空けずに答えた。
「そんなにっ……⁉︎」
「気負わなくていいんですよ、人間、後頭部強打したら普通こんな早く起きませんから」
葛葉という人物を少なからず知っているスミノは、葛葉が次にどういったことを考えるのか、それを瞬時に計算して気休めの言葉を吐いた。
葛葉はバツが悪そうにしているが、誰も責める者は居るはずがない。それなのに何故? とスミノは考え込んだ。
「鬼代様」
「ん、何?」
「先ほど、律様がここにいらっしゃいました」
「……律が? なんで?」
考え込んでいたスミノがふと大切なことを思い出し、さらっと挨拶を言う感じで葛葉に伝えた。
さらっと言われた葛葉は疑問符を浮かべ、小首を傾げた。何故なのかと、スミノを見るとスミノが口を開いた。
「頑張りますね、と言伝を頼まれました」
それを聞いても葛葉の頭の上の疑問符は消えて無くならなかった。無くなるどころか、さらに疑問符が増えたのだ。
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