九話 鬼キャラが大好き!
狐と鬼のキャラが好きなのは自分だけ……?
「あいつは本物の鬼だ!」
その場に立つだけで、敵の戦意を、味方の信頼を失くす孤独の鬼。
生まれながらに一人、たった一人で魔獣が蔓延り我が物顔で弱者を蹂躙する森で生き抜き、鬼族の巫女に拾わられる十年間。その日々が無駄な訳がない。
本来の用途とは全く違うが、巫女が愛し、守り、存続を願った子孫達を守るためにも全力を出す。
巫女に忠誠を誓い、その中でも一番忠誠心が高かったのが彼だった。
「小鬼風情が……舐めたことを。大将を出せ、その首持ち帰ってやる」
「――昔の威勢が蘇ったのだな?」
そう問い掛けながら中央から歩いてくる少女。
魔王軍幹部――リリアル・ペンドラン。元々は貴族の人間でありながら、悪魔と契約を交わし、剣を極め続けがために永久に生きる少女。
「久々だな、嬢ちゃん」
「――ふっ! まだその呼び方をするのだな。とっくのとうに忘れてるかと思ってたのだ」
「……無駄に一緒に冒険してねぇだろ」
「あぁ、そうだった」
「……」
「……」
そう、二人が昔話に花を咲かせ沈黙したかと思うと同時。視界を覆う土埃が舞い、直ぐに剣戟の音が四方八方から聞こえてくる。
右から聞こえたかと思うと、次は左、右、上、下。もうどこで戦っているのかすら分からない。
玄武の部下も、リリアルの部下も只々土埃で塞がれてる視界の中、必死に音の鳴る方を見やるだけだ。
「ほう、少しは強くなったんじゃないか?」
「まだまだなのだ!」
両刃剣を刀で払う。さも流水のように石を、岩を避けて流れるように打ち払う。
その度に持ち手を変えたり、フェイントを掛け斜め上端からの袈裟斬りをお見舞いさせようにも、また剣があらぬ方向へと流される。
「――っ!?」
とそんな繰り返しがずっと続くはずだった。
地面からかなり離れた上空。リリアルよりも先に玄武が上を抑え、リリアルの腹部へ蹴りを喰らわせる。
猛スピードで地面に落下し、大地に小さなクレーターを作る。華奢な身体は叩きつけられたことで、ボールの如くバウンドし宙に浮く。
背骨に罅が入り、肺の酸素も全て体外へと放出され、軽い脳震盪を起こす。
そして玄武が地面に着地し、宙に浮くリリアルへ刀を投擲しトドメの一撃として、短刀も投げつけた。
それが、流れが遥かに遅くなっな世界で起きたことだった。
「これで終わりだ――」
宙に浮いていた身体が吹っ飛ばされ、森の奥へと飛ばされる。木々を薙ぎ倒し、身体には傷が増えていく。
そして元いた場所から五メートルほど離れた、岩にぶつかり止まる。四肢は逆方向に曲がり、刀が刺さっている腹部からは血が止まらない。口から血を吐き、岩にめり込んだリリアルは、ゆっくりと近付いてくる玄武を睨め付ける。
読んで頂き、ありがとうございます!
もうね、諦めたよね……投稿する時間を一緒にするの。