二話 共に戦う
「英雄殿……ならば心強い。今、我々は戦力が欲しい。スミノ殿や一殿、そして鬼丸殿。彼女らの奮戦により、だいぶダメージを与えている。のだが……」
地面に張り付けられていた七つの首がゆっくりと起き上がり周りを見回した。魔術師隊の内の1人が炎属性の魔法を放つが、八つの頭の所為かまんまと交わされてしまうのだった。
「この調子で、我々には何も出来ないのです……!」
今目の前で起こった光景に、悔しそうに拳を強く握るのだった。
「……あの、ミハヤさん達は近接戦をしないんですか?」
一通り見ていた葛葉が一つ疑問に思ったことを、悔しそうにしているミハヤに聞くと、ミハヤは顔を曇らせて、
「近接戦が出来る兵士は皆、魔獣の殲滅に充てているので、攻撃手段は魔術師隊の魔法のみなのです」
「なるほど……」
ミハヤの説明を聞いた葛葉は、自分の手に持っているナイフに目を向けた。
今、近接戦が出来るのは葛葉を含めた4人。
ミハヤは指揮をしなくてはならない為、前線で戦ってしまえば色々と瓦解してしまうのだ。
「……鬼丸」
「む? なんじゃ?」
葛葉に追いついた鬼丸に声を掛けた。葛葉はギュッとナイフを握る手の力を強めて、覚悟を決めた。
「私も戦う、遠いところからじゃなくて……近くで……」
「……そうか。分かったのじゃ、じゃが、わしから離れるな。いざとなった時は、わしが守れるように」
葛葉の言葉を聞いた鬼丸は、頷き返し担いでいた金棒を下ろした。そしてニッと笑みを作って、金棒を『邪竜』へと向けて、葛葉にそう言うのだった。
「準備は良いか?」
「ん、準備……OK!」
銃の不備がないかをよく確認した葛葉は、親指をして鬼丸に言うのだった。
そんな葛葉をよく見てから鬼丸の後ろ、ミニガンを手にせっせと走って来る一に振り向いて、スゥと息を吸ってから。
「おぬしもじゃぞ〜!」
と大きな声で言うのだった。遠くの一は両膝に手を付いてはぁはぁと乱れた息を整えていて、聞こえているかどうか怪しかった。
「よし、行くのじゃ!」
「うん!」
鬼丸と同時に駆け出そうと葛葉が足を前に出した時だった。
「―――英雄殿」
「っ?」
後ろから声を掛けられた。振り返ればミハヤが先程とは違った顔で葛葉を真っ直ぐと見てきていた。
「我々も必ずや兵士を集め、共に戦います。ですからどうかご武運を……!」
その言葉に葛葉は深く頷いた。そして『邪竜』へと目を向けて駆け出すのだった。
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