二十二話 戦いは続くよ地の果てまでも
「立って下さい、まだ魔獣は沢山居ますから」
「は、はい!」
葛葉のことから目を離せなかったら律はやっと、目を離して前を向く。そして大量にいる魔獣達を見やってから刀の柄に手を置いた。
背後には一生懸命に戦っている葛葉がいて、きっと律のことを見ている。故に余裕が無くても、律は恥ずかしいところなど見せることは出来ないのだ。
「……おじいちゃん」
刀の柄を握り締め、あの世にいるであろう祖父の顔を思い浮かべた。
「五十鈴さん。少し、私から離れていて下さい!」
「……あ、そういう」
唐突にそう言う律の構えを見て、五十鈴はそそくさと律から大分離れるのだった。
魔獣は、仲間から逸れ無防備な格好に見える律を見て、涎を垂らし掛け出した。
飢えた獣は一直線に襲いかかった。
「おじいちゃん直伝! 一の奥義『居合燕返し』」
だが次の瞬間には、縦に三等分されていた。
「二の奥義!」
一匹のみでは勝ち目がないと踏んだ他の魔獣達が一斉に駆け出した。その数おおよそ30以上。
律はすぐさま居合の構えを解き、次の技の構えを作った。
「『散る華』」
一斉に飛び掛かろうとした魔獣達の身体がパッと弾けた。血の雨が地面を染めて、それを尻目に刀を鞘に仕舞い込む律。凄いと思った五十鈴が律の顔を見やると、律はドヤ顔を浮かべていた。
そんな時だった、
「―――総員警戒っ‼︎ 魔獣の大群だ―――ッ‼︎」
そんな一人の兵士の声が聞こえてきた。
その場の全員がバッと顔を声を上げた兵士へ向け、その先の森の奥を見た。
ゾロゾロとやってくる多種多様な魔獣達。
「な、なんて数……ッ」
そんな声が何処からか聞こえてきた。
異様な光景に手が自然と震える律と五十鈴。
魔獣が徒党を組み、兵士・冒険者達を蹂躙せんとする、そんな異様過ぎる光景。
「まだ、こんなに残ってるのによぉ」
「くそったれ!」
兵士たちが各々感情をむき出しにした。
まだまだ魔獣が大量に残っていると言うのに更に追加されることに。
「律様っ」
「は、はい!」
迫り来る魔獣達を目にしつつ、五十鈴は駆け出した。
律もそれに遅ればせながら刀を構えて走り出そうとした時、一瞬で目の前が七色の炎によって炭へと変えられるのだった。
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