二十一話 悩みを払い、敵を穿つ!
遅れてすみません!
葛葉は迫り来る魔獣達を的確に射抜いていった。
カチッとマガジンの中の弾を撃ち切ると同時に、葛葉は虚空庫から予備マガジンを取り出して、迅速にリロード。
近寄っていた魔獣達を蜂の巣に変えた。
(流石に量が……ワンマガ30じゃ少ない……!)
目の前の敵の数に下唇を噛み締める葛葉。
そんな葛葉の隣では流れ作業のようにモシン・ナガンで魔獣達を射殺すアーシャが、慣れた手つきで弾を装填していた。
(スッゴ……。……あっ!)
その技術に驚き目を向けていた葛葉に、魔獣が隙を突いて飛びかかった。
だが葛葉は間一髪のところで攻撃を回避し、銃のストックで魔獣の頭を潰した。
「アーシャ、弾は大丈夫そう?」
「えぇ、一発一発が強力だから、当たりどころが良ければ二体同時に倒せる。だから節約もできる……! 流石同志の銃!」
ボルトアクションライフルだというのに、敵を倒していく速度が葛葉とあまり変わらないことに、葛葉は苦笑した。
―――そんな葛葉を尻目に、律は五十鈴が足止めしている魔獣の首に刀を刺し込んだ。そして下方向に力を加え切断した。
「律様ッ!」
刀の血を払い落とし一息吐いていると、背後からドンッという衝撃と五十鈴の声が聞こえてきた。
転けながら振り返ると、そこには腕を魔獣に噛まれ血を流す五十鈴の姿があった。その五十鈴の姿を見た瞬間刀を抜き魔獣を斬ろうとした、がドスンッと盛大に尻餅をつき、足が痺れ掛け出すことが出来なくなってしまったのだ。
「っ………つ! 五十鈴さんっ‼」
根気で立ちあがろうとしたと同時に、五十鈴の額から一本の角が生えたのだ。
鬼族の五十鈴が『鬼化』を使ったのだ、周囲の魔力を喰らう角は淡い光を発していた。
五十鈴は腕に噛み付いている魔獣の頭部を鷲掴むと、片手でゆで卵を握り潰すように、プシャッと潰した。
「……っ。はぁ……はぁ……、ご無事ですか、律様……?」
「わ、私は平気です! それより五十鈴さんが!」
急いで五十鈴の下に走り、腰のポーチから回復薬を取り出してバシャっと傷口へと掛けた。
すぐに再生が始まり傷口が塞がっていく。鬼である五十鈴は回復薬を掛けずともすぐに傷は再生されるが。律はそのことを忘れていた。
「……律様、律様?」
何処か焦っているような律に、五十鈴は違和感を覚えた。
「安心して下さい、律様は足を引っ張ってなどおりませんよ」
「……え、あ。……す、すみません、気を遣わせてしまって……」
五十鈴の言葉を聞いた律がハッと正気になった。
パチパチと瞬きを繰り返して、五十鈴の顔を見やった。優しく微笑む朗らかな顔がそこにはあった。
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