十七話 決断は早くなければ
「第一第二第三防衛陣地、壊滅ですっ……‼︎」
『っ⁉︎』
ミハヤの予想が当たった。
そしてこの地響きの正体は、もちろん。
「……『八岐大蛇―――ッ‼︎』」
ミハヤがキッと視線を後ろに向けると同時に、山の一部が吹き飛んだ。
地響きの正体である、8つの頭を持つ、超大型魔獣。邪竜『八岐大蛇』。
「退避―――ッ‼︎」
ミハヤの号令が聞こえたと認識した一瞬で、目の前が爆発した。
土煙の中には大きな尻尾が。
「なんなんだこれは!」
「何が起こった‼︎」
「無事か! 怪我人を運べ!」
「また攻撃が来るぞ―――‼︎」
尻尾の次は一つの頭から放たれるブレス攻撃。
迫り来る炎に兵士たちや冒険者達は一目散に逃げるのだった。
「鬼丸―――っ‼︎」
迫り来るブレスを見て鬼丸は、逃げ遅れを救おうと持ち前の腕力で、巨大な金棒を回転させブレス攻撃を防いだ。
ブレス攻撃の次にはまたもや打撃攻撃が繰り出され、鬼丸へと迫った。
「―――隊長! あ、あれを‼︎」
鬼丸の勇気ある行動に唖然としていたミハヤだったが、先程からずっと切羽詰まった部下の声を聞き我に戻った。
部下の指差す方向は山の森の中、その木々の間からじっと見やってくる無数の魔獣達。
「なんだ、あの数……」
「そんな……」
「終わりだ……」
無数の魔獣と様相の異なる邪竜に、兵士や冒険者たちが膝を折り地につけた。
デカすぎる絶望と、追い討ちの小さな絶望。
誰も立ち上がられず、皆が顔を覆い頭を押さえてしまう。
「……っ!」
ミハヤがどうすべきか悩み足を止めていた時だった、誰かの叫び声がしたのだ、それは最近聞き慣れた声だった。
「鬼丸‼︎」
葛葉の声にバッと振り返ると、そこには邪竜の尻尾を受け止め弾き返した鬼丸の姿があったのだ。
その姿を見たミハヤは、ギュウッと拳に力を込めるのだった。
「何しておる! 早く撤退するのじゃッ!」
そんな鬼丸の撤退指示にミハヤは眉間に皺を寄せていた。すでに八百以上の兵を死なせ、兵士たちの士気は下りに下がっており、目の前には大量の魔獣の姿、勝ち目のない戦いだ。
だがその八百の兵の死を無駄にすることが、ミハヤの決断を鈍らせていたのだ。
「しかし……」
「時間はないんじゃ!」
鬼丸の圧に、ミハヤは渋々撤退の号令を掛けようとして、大きな爆発音に遮られてしまった。
爆発音のした方に全員が目を向けると、『八岐大蛇』の8本ある首の一つから煙が立ち上がり、血が滝のように溢れ溢れていた。
「……鬼丸!」
見た目的には大ダメージの傷を与えたであろう人物に、ミハヤと鬼丸の視線が向かった。
読んで頂きありがとうございます!!
面白いと思って頂けましたら、ブックマークと評価をお願いします!!