表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
522/753

十五話 帰るために

「一本め飲み切ったまでは覚えとるんがなぁ〜」

「なんでそこで辞めなかったんですか」

「なんでやろなぁ〜」


 分からんわ、とそう言いあははと笑う一に、五十鈴や律がうわぁとでも言いたげな目を向けるのだった。

 すると一は一度背伸びをしてから、座っていた椅子から立ち上がった。そして自分の武器を取り出した。


「葛葉ちゃん達も準備するやで」


 言って、アサヒと同じように去って行ってしまった。

 葛葉は視線を周囲に改めて向けた。

 アサヒや(にのまえ)と同じような表情で忙しなく準備を進める兵士たち。皆覚悟を決めていた。


「・・・」


 周囲を一通り伺った葛葉が視線を戻すと同時だった。

 葛葉達の座っているテーブルの横を通っていく200人の兵士たち。

 第一防衛陣地で奮戦する兵士達だ。

 一人一人の顔を葛葉は見やった。誰も嫌そうな顔はしておらず、死ぬことを恐れて泣きそうな者も居なかった。

 それは当然だ。なぜなら、防衛陣地に向かおうとしているのは一人一人が死を覚悟し、自らの死を礎にこの国に勝利と繁栄を願う、【名も無き英雄達】なのだから。

 葛葉は視線を戻し、朝食を再び食べ始めた。


(今までの激戦とは全く雰囲気が違う……)


 『ゴブリン・キング』や『魔王軍幹部リリアル』や『鬼丸』や『奴隷商傭兵ヴァーン』や『魔王軍幹部二人』との戦い。全て激戦だったはずだが、ここまでの雰囲気はなかった。

 今までの戦いを振り返った葛葉はぎゅっと手に力を込めた。そして、


(勝たないと)


 確固たる意思で心の中で呟いた。


(生き延びるために、明日を迎えるために。緋月さんの元に帰るために―――)




『―――満月が夜に輝く日、空は血の色に染まり、邪竜の慟哭が世界を覆うだろう。邪竜はもはや、人の力では対抗できぬ神災と成る。人々が欲するは、英雄のみ』


 そう書かれた古文書をビリビリに破き、ゴミ箱へとパラパラと捨てるのだった―――。

読んで頂きありがとうございます!!

面白いと思って頂けましたら、ブックマークと評価をお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ