十四話 酒を飲んでも飲まれるな?
葛葉の言葉を聞いていたのは鬼丸だけではない。正面の五十鈴が葛葉の顔をジーッと見やってきてたり、隣の律が鬼丸と葛葉を交互に見ていたりと、不安そうにしていた。
「……これで後々問題が見つかるのは嫌ですよ?」
「さ、流石にそんなことは……ないと……思い……たい……」
五十鈴の言葉を聞いた葛葉が、鬼丸の名誉のために必死に可能性は低いと言おうとしたが、確信が薄れていき、だんだんと言葉が尻すぼんでいった。
自信なさげに地面に視線を落とす葛葉。そんな葛葉に憤りを露わにするのは当然、鬼丸だった。
「わしをなんだと思っとる⁉︎」
鬼丸には声を荒げて激昂する権利があるのだ。
「鬼丸様……」
「む? な、なんじゃ?」
五十鈴が鬼丸とちゃんと向き合い鬼丸の頭を、我儘を言う子供をあやす母親のように優しく撫でながら、優しい声で言った。
「ここはいつものオリアの街の近くではありません。ので、緋月様や葉加瀬様の権力を行使する以前の問題なのです。……それなのに、暴れて問題が発生しましたら、誰が責任を取らなければなりませんか?」
優しい? 口調で優しく説明する五十鈴。
葛葉は苦笑い、律は怯えて葛葉の服の裾を握っていた。
「じゃが……目一杯暴れて良いと……」
「限度を考えてです!」
「む、むぅ……」
五十鈴の圧に屈して、鬼丸は渋々分かったと俯きながら言うのだった。
五十鈴ははぁとため息を吐きまた再び葛葉をジッと見やった。
葛葉がモグモグと動かしていた口をピタッと止めて五十鈴の顔を、目を逸らさずに冷や汗を掻きながら見やった。
「葛葉様も発言には責任を持ってください。吐いた唾は飲み込めませんよ?」
「は、はい……」
無責任に目一杯と言ってしまった葛葉は、あはは〜と笑いで誤魔化そうとしたが、五十鈴の鋭い目に見られてしまい、素直に返事をするのだった。
葛葉と鬼丸がトホホと呟いたその時だった。
「葛葉ちゃん、おあよ〜……うっ、ゔぅ。あだまいだい……」
吐きそうな顔で頭を手で抑える一が、葛葉の肩をトントンと叩きながらそう言ってきた。
「に、一さん……大丈夫ですか?」
「うぅ、無理ぃ。えっぐい痛いんよ〜」
顔と声を見聞きしただけでヤバいことが分かる一に、葛葉が一応声を掛けたが、案の定ヤバかった。
そんな一の隣にはスミノが酒瓶を5本持って立っていた。
「飲み過ぎたんですね」
「……やっちゃったんよね」
ついついと後頭部に手を当てて、あはっと笑みを浮かべる一。
はぁとスミノがため息を吐いてテクテクとどこかへ歩いて行ってしまった。
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