表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
519/750

十二話 馬鹿馬鹿しくなって

 そんな五十鈴を見つつ、一はほんの少しだけ意地悪をしてみることにした。


「せやからうちに守って欲しい言うん? 五十鈴ちゃん等は葛葉ちゃんのこと、信じてへんの?」

「信じてます! ですが、いつもあの人は……」


 一の言葉に五十鈴は間髪開けずに勢いよく応えた。が、すぐに顔を曇らせて今までの大きな戦いを振り返った。


「大切なんは分かるんよ。せやけど、戦いにおいてその感情は邪魔になるんよ」

「それは理解してます。……あの人は無理をしてしまうことは、もう割り切ったはずです」


 だが五十鈴は頭の隅では割り切れていないのだった。


「うちはほんまにヤバなった時には、葛葉ちゃんを助けるし、守るで。うちにとっても大切な子やからな」

「……ありがとうございます!」

「あぁ勘違いしぃひんよ? そうならないようにしてくれって思てるねん」


 頭を下げて感謝を伝えてくる五十鈴に一は慌てて声を掛けた。葛葉だけを守ると言うことは他の者達が皆戦死し、逃げの一手しかなく、敗北を喫したからだ。

 最悪の結末や。と一は自分の考え得る限りの全てのルートを頭の中で思い浮かべて、ハッと鼻で笑うのだった。


「うちはテントに戻って酒飲むわぁ〜、ほなじゃあの〜」


 と片手に盃を持ちつつ、片手で五十鈴に手を振りながら帰っていく一。そわそわと五十鈴はそんな一に落ち着けなかった。

 それは今にも溢れそうな盃に注がれた酒のせいだった……。


「五十鈴〜、歯ブラシどこ〜?」


 テントの中から聞こえてくる声に五十鈴は顔を向けた。するとテントから、歯磨き粉だけを手に持った葛葉が出てきた。

 そんな五十鈴の不安が馬鹿馬鹿しくなるような葛葉を見て、五十鈴は安堵の笑みを浮かべた。

 もしかすると、何事もなくあっさりと終わってしまうのではと。


「バッグの中に入ってはおりませんか?」

「えー? 無いよー?」


 明日戦いに赴く人間とは思えない、その姿。五十鈴はやれやれと言いたげな顔で、テントに向かうのだった―――。

読んで頂きありがとうございます!!

面白いと思って頂けましたら、ブックマークと評価をお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ